画像はAmazonから。
盛大に昼寝をしたせいで寝付けないので、どくしょかんそうぶんを書きます。いいよね?
最近恋愛モノに飢えてしまって、ついポチってしまった数冊のうちの2冊。
『君に恋をするなんて、ありえないはずだった』
『君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業』
タイトルからは分かりづらいものの、いわゆる上下巻構成なのです。最近こういう分冊スタイルが散見されるのですが、マーケティングの一種でしょうか? 上下とか1巻2巻と付いてると敬遠する人もいそうですし。私はAmazonのレビューで知って迷わず両方買いました。
いわゆる「なろう小説」なのですが、流行のラノベラノベしたファンタジーものではなく、純愛ものの一般文芸といったところ。高校生男女が主役ですがダダ甘のラブコメでもなく、リアル路線の青春小説といえるでしょう。かの名作『海がきこえる』にも通じるところがありますね。
主人公は今時分携帯電話も持ってない非リア系高校生男子。ただしオタクでもボッチでもなく、過去のトラウマを抱えるわけでもなく、プレーンな背景を持った少年です。ドラマ的な条件は足りないんですが、この方が誰にでも感情移入できますものね。
少年が恋をする相手はちょっと取っ付き難いリア充寄りの美少女(処女)です。エロマンガかよ。いやいや、むしろ必然あっての(処女)なのです。彼女は見た目ゆえ変な男が寄ってくるし噂にもなるし痴漢にも遭うし、男が苦手。だからこそ一介の非モテでしかない主人公を偏見なく見ることが出来るし、倦厭することなく接するうちに両想いになることができるのです。
前半部分、つまり1巻目の大部分は、互いが「興味を持ち理解を深める」ために費やされます。ラノベやエロマンガ特有の「好きになってた」はありません。読者と同じペースで恋をしていくのです。ですが中盤、決定的なすれ違いが生じ、そこで1巻が幕を閉じます。いい感じの、極めていい盛り上げ具合のクリフハンガーです。
2巻目、すれ違いは狭まることなく、元来非モテだった主人公はさらに卑屈になり溝を深めていきます。美味しいのはこの間の彼女の側の描写です。遠ざかる主人公の姿に初めて恋を意識するのです。ああもう教科書的ともいえますね。でもこの自然発生的な駆け引きを省いて恋愛モノでございという顔をする文芸・アニメ・映画・ゲームが氾濫する世の中なので、かえって新鮮ではないでしょうか?
2人を共に知る友人(これも主人公からすると別世界の人間)が何度も救いの手を差し伸べますが、多くは無駄に終わります。そう、人の厚意を無駄にするからこその非リア充ですよね。
最終的に偶然の再会から、どうしても気持ちを抑えられなくなった二人は気持ちを伝えあって結ばれるのですが、読んでいて「早くしろ! 早く言え! 抱け! 抱きつけ!」と熱くなれます。
ただしこの少し前の場面がこの作品の欠点の一つでもあります。主人公は彼女が誰かを想っていることは知っていたのですが、今までの経緯を思い出し、それが自分かもしれない、という点に思い至ってしまいます。これはずるい。彼は彼女が自分を嫌っていても構わない、振られてもいいから好きだと言いたくて彼女の元へ向かうわけではないのです。このせいで、主人公がどこか打算的に見えてしまい、後の番外編を少し冷めたまま迎えてしまうことになりました。エロマンガの読みすぎですかね?
もう一つの欠点は物語の流れに由来して逆算的に描かれた二人の人物像そのものなので、どうしようもないものです。皆の輪に完全には溶け込めてない「少年」はしかし見た目には悪くなく勉強が出来ないわけでもなく運動が極端に苦手なわけでもなく、コミュ障ですらありません。なぜ友達がいなくてモテないのか謎です。外見はイケてて友達も多く、主人公の魅力に気づく観察力を持った「少女」は設定上男が苦手というだけです。ステロタイプなマンガ的人物は嫌われるでしょうが、別に普通の高校生男女と入れ替わっても成り立ってしまうなぁ、と残念です。
注意点として、2巻目のいいところでこの二人、普通にセックスします。まあ番外編だし、甘々な二人なので許せてしまうのですが、苦手な人は少し注意が必要でしょう。別に克明な性描写もないので害はありませんよ。
最近ひどい寝取られもののエロマンガを読んで以来、愛し合うふたりがきちんと結ばれるだけで嬉しいのです。心が洗われます。それでも煤が多少落ちる程度ですが。
一緒に買った小説がまた悲恋ものというか泣かせ系だったので、気持ちが乱高下して落ち着かない最中ではありますが、機会を見てまた感想を上げられたら、と思っています。