伊坂幸太郎さんの『フーガはユーガ』を読み終えました。
読み始めてすぐに感じたのは、「これはただの能力モノじゃない」ということです。
物語の軸になるのは、テレポーテーションという一見すると派手な能力。
でもこの作品では、その力が決して万能ではありません。
むしろ「それ、そんなに役に立つ?」と思ってしまうほど、使いどころが難しい。
その設定が、とても伊坂幸太郎さんらしくて面白いのです。
その能力を持つ双子の存在が、この物語を一気に魅力的にしています。
二人だからこそ成立する距離感、会話、そして選択。
息の合ったやり取りの中に、軽やかさと切なさが同時に流れていて、ページをめくる手が止まりませんでした。
テレポーテーションがあるからといって、何でも解決できるわけじゃない。
むしろ、どうにもならない現実や、救えない感情が浮き彫りになっていきます。
それでも双子は、その「役に立たないかもしれない能力」を使って、自分たちなりのやり方で世界と向き合っていく。
その姿が、静かに胸に残ります。
派手なバトルも、分かりやすい正義もありません。
けれど読み終えたあと、心のどこかがじんわりと温かくなる。
不思議で、優しくて、少し苦い。
そんな物語を読みたい人には、間違いなくおすすめの一冊です。
伊坂幸太郎作品が好きな人はもちろん、
「ちょっと変わった物語を読みたい」と思っているなら、この本はきっと、あなたの本棚に迎えたくなるはずです。


