第一章 出逢い
《衝撃》
20〇〇年の6月。
竜也の仕事場に、一人の女性が異動でやってきた。
二、三日前からそんな話を上司から何気に聞いていた竜也だったが、大して気にとめる事もなかった。
いちいち女の子にキャーキャー騒ぐほども若くない。興味がないわけではなかったが...。
竜也の仕事は、TB社というけっこう大きな会社で、彼はそこで期間社員として働いていた。仕事は二直制で、一週ごとに早番遅番の交代制。
以前は自分で居酒屋をやったりとか様々な仕事を経験し、現在に至るのであった。
そんなところへ彼女は現れた。
早番で、朝の6時半。彼女は上司に案内されながらやって来た。
小柄でスレンダー。髪は仕事上しばってはいたが、下ろせば腰の少し上位まではあるんじゃないだろうか。スキニーでブーツカットのジーンズがとってもよく似合っている。
竜也の目に彼女が映る。
一昔前だったか...。芸能人の恋愛とかで、『ビビビッと来た。』というのがよくあったが、この時の竜也も同じ感覚を感じていた。何度も様々な恋愛を経験し離婚も経験している竜也だったが、この感覚は初めてだった。
一目惚れ...?
そんな感覚に不思議さを感じながらも、この日は『おはよう』の一言だけで終わった。
しかし竜也は、なぜか爽やかさにも似た幸せを感じていた。
翌日...。
竜也は自分から声を掛けてみた。
『おはよう!』
彼女はビックリした様子で、
『あっ、おはようございます。』
と答えてくれた。
結局この日も、会話はこれだけ。しかしながら、仕事上彼女は、竜也の前を何度も行き来する。その度に竜也は、自分の胸の高鳴りを感じていたのだった。
竜也は、毎日同じ仕事を淡々とこなし、なんの変化もない日常を送っていたのだが、ここに来てその日常の感覚の変化を、確実に感じていた。
彼女に出逢って三日目。
竜也は思い切って名前を聞いてみた。
『俺は竜也、冨永竜也。名前は?』
『下林ですよ。』
竜也は追い撃ちを掛けるように聞く。
『下の名前は?』
すると彼女はいたずらっぽく、
『ミ・ユ・カ』
答えたのだった。
『じゃあ、ミユカとちゃんって呼んでいい?』
『うん、いいよ。じゃあ私は...たっちゃんでいい?』
『全然OKだよ。サンキュー!』
竜也にとって、それはたまらなく嬉しい出来事だった。そしてその日の昼休み、二人はアドレスの交換をした。
その日から竜也とミユカのメールが始まり、急速に二人の距離が縮まっていったのであった。
竜也は有頂天なっていた。
この先に訪れる今までに経験したことのない哀しみを受ける事になるなんて、竜也はまだ知らずに...。
Android携帯からの投稿
