ええ!もうあれから一週間?なんてよく言うけど、月日の流れがほんと早く感じる。子供の頃は、濃密でゆっくりした時間がじっくりと流れていた。早く大人になりたいと思ったところで、自分が大人になるなんて、永遠に訪れない、遠い未来の別次元の事のように思われた。しかしながら世の中には、いや、世の外には、訪れてほしくない別次元というのもあるもので、先週は、南房総の鋸山で「地獄のぞき」なんたるものをやって来た。
 仏教には心の境地を表す十もの世界があり、上から仏界、菩薩界、と続いて天界、人界、を通って、一番下の最下層が地獄界なんだとか。突き抜けるような青空の下、さらに下を覗くとなるほど足がすくむ。さらに別のアングルからこの場所を見ると、地震かなんかで、グラっときたら、ボロッといきそうで、ハハハ…(冷笑)


 中島らものエッセイで面白い一節があった。うる覚えだが、こんな内容だったと思う。
 人間の眼球の造りは、ようはレンズなのだから、世界の景色は、上下が逆さまに映るはずである。それがそうならないのは、さらにもう一度、倒立した世界を反転させる機能が脳内に備わっているからなのだ。しかし蚊にはこのような機能はないらしい。するとあれか?奴らの天への上昇とは、地獄への下降なのか?確かこんな話だったと思う。
 この世の全ては相対的な関係の中で出来上がっている。上も下も、内も外もないのだ。満天の星空の下、遠い彼方に思いを馳せていた思いのベクトルが瞼を閉じた瞬間、同じ方向を向いたまま内側へ突き刺さっていくのを感じたことはないか?また静かに瞑想している時、そっと瞼を開いて上を見ると。天空彼方に思いが突き抜けていくのを感じたことはないか?
 今、きつい状態に打ちひしがれている彼方へ、地獄への下降だって、天への上昇かもしれない。帰り道の海辺の夕日は、いつになく不可思議なオレンジ色をしていた。
ムードトンボのめがねはオレンジめがねーカオスの業火も見てたからーみーてたからー