専門家にとって「外部との情報収集が困難」だった。

これは6月24日のコロナ感染対策における、専門家会議の構成員の記者会見で発表された一文です。

 

その発表によると研究や医療データなど、専門家や厚労省が「手探りで情報収集」することが多かったと報道されています。今回の新型コロナウイルス感染に関しては、ものすごい数の医療研究が日々世界中から発表されていました。そのため各専門家もこの大量な情報を基に、即座にデータ収集分析し、科学的知見を基に政府とともにタイムリーに医療政策決定を行う必要性がありました。ですから今回のコロナ対策の医療政策決定においては少数の専門家だけでなく、領域横断的に様々な専門家が関わるような、法律整備と構造が不可欠でした。しかし日本では、そのためのインフラが追い付いていなかったことが課題としてあげられています。

 

では重要な医療政策決定において、今後どのような医療政策構造が日本では望ましいのでしょうか。

 

そこで今回は英国の専門家会議(SAGE)の構造をご紹介したいと思います。英国専門家会議(SAGE)は従来から、多岐にわたる専門家から、情報や研究結果が収集できやすい構造となっています。まず専門家会議のメンバーに関しては、「diversity」が重視されています。感染症や疫学者の専門家以外に、行動科学者、心理学者、 モデリングや統計の専門家、緊急対策の専門家、動物学者、ウイルス科学者や疫学者などさまざまな職種で構成されています。今年1月22日発足当時は21人だったメンバーが、現在では80人以上に増えています。

 

またこのSAGEの下に他4つの専門家会議が支援し、「多岐の専門家からも情報収集」が行えるようになっています。その中でも興味深いのは、「医療データのプラットフォーム」 Health Data Research UK(HDRUK)との連携です。

 

HDRUKは政府とは独立しており、10の非営利団体の資金で運営されています。468もの巨大な医療データベースを管理し、多方面の研究データをつなげています。個人情報に配慮しながらも、海外の研究者までもリアルタイムでこの大規模な医療データにアクセスをすることが可能になっています。HDRUKはSAGEと連携し、これまで三つの治療薬の研究(recovery) やCOVID-19のリスクを計算するオンラインツールなどさまざまな研究に協力しています。他このデータベースを使用したCOVID-19の研究は、これまで約90近くになります。

 

今後日本が医療政策において進めるべき第一歩は、「医療データの電子化・統一化」、そしてそのデータを研究者が容易にアクセス可能にする「医療データベースの集約化」です。こうして「信頼性」をもった科学的根拠を基に、専門家がさまざまな医療政策決定の土台にしていくことを目指すべきでしょう。