「知白守黒」
一枚の紙のまん中に、大きな花瓶の絵が白黒の二色で描かれています。有名な絵ですよね。ご覧になったことがありまか?
注視するのはその花瓶ではなく、その左右の線によって区切られた二つの空間です。
するとその空間はなんと人の顔が互いに向き合った形ではないですか。
この模様を作り出している一本の曲線がもし文字であるならば、「書」はこうした文字の造形によって、ある種の空間を作り上げているのです。
書道とは文字を素材として「紙」(白)と「墨」(黒)という基本的な用具が織りなす芸術であるが、その「紙」というものを単に用具の「紙」として見るのではなく、「白」つまり「空間」として捉えるべきです。
「黒」だけでなく「白」も意識した美的造形感覚を養っていかなければなりません。
そのうえで「黒」つまり「文字」を書かなければなりません。でなければ「お習字」的になってしまいます。
≪引用≫
字画の疏なる処は以て馬を走らす可く、密なる処は風をも透さ使めず。常に白を計りて以て黒を当つれば、奇趣乃ち出ず。(包世臣『芸舟双楫』所収の鄧石如の言葉)
=これは清の鄧石如が、包世臣に直接会って語り伝えたという書作の極意に関する言葉である。
筆に墨をつけて文字を書くということは、点画を紙上に置いてゆくことであると同時に、その一刻ごとに、形をともなう余白を作り上げていくことでもある。
常に余白への配慮のもとに点画を置いてゆくことこそ、すぐれた書の表現を生むための条件であるという。=
「白」を見るという感覚はなかなかつかみづらいものであるが、是非とも気にかけてほしいと思います。
書道研究 墨游会
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