少女は電車とバスを乗り継ぎ1時間かけて学校に通っていた。

電車はともかく、バスは通勤と通学の時間帯が重なる事もあり常に満員状態で
座る事も出来ず小柄な少女には辛い時間帯であった。

時には痴漢と思わしき人に体を触られ怖い思いもした。
それでも少女は通学時間を変えず決められた時間のバスにしか乗らなかった。

(あ、今日もいた・・・)
少女はバスに乗り込むと周りを見回しその人を探す。

少女の目の先には少女と同じくらいの年齢の男の子
名前も知らない男の子だった

少女より先に乗り、後に降りてる
○○高校の生徒だとはわかっていた

以前少女が降りようとした時に、定期を混み合ったバスの中で落としてしまい
慌てて探している時に一緒に探してくれ見つけてくれた。

お礼を言ってバスを降りたがその時から、なんだか気になる存在になり
バスに乗るたびに探すようになっていた。

混みあったバスの中ではなかなか近くに行く事も出来なかったが、
バスで見かけるたびに嬉しくなりその日1日元気になれる気がした。

そんな通学も1年近く続くと、その間に少しずつ話す機会も出来て
仲良くなっていった。



そして夏休み・・・



携帯電話の番号を交換はしていたが、彼からの電話やメールはなく
また少女から電話やメールをする勇気もなく日にちだけが過ぎていった・・・


始業式の日

彼と同じ日に学校が始まると知り、彼に会える楽しみで
気持ちは一杯になりながらバスに乗り彼を探すと・・・

(いた!)

彼に会えた喜びに満面の笑みを見せる少女
彼もまた笑顔を送っていた。

しかし、その笑顔は少女に送られてはいない・・・
彼の隣で親しそうに笑う制服を着た知らない女性に送られていた・・・





その後の事を少女は懐かしそうに振り返る。
(あの日の事は忘れていません。何も手につかず帰ってからも
部屋で泣いていました。きっと恋をしていたと思います。
今となっては懐かしい失恋の思い出ですけどね)





その失恋から早や9年・・・

少女は恋愛と失恋を繰り返しながら女性へと成長し、
今日も彼女を待つ患者さんの元へ歩み寄る。

(おはようございます。お体にお変わりありませんか?)

患者さんに向けた笑顔は、あの日彼に向けた笑顔そのものだった。




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