三日目。
この日は前日の合格を受けて、チャレンジ校を受験。
合格したら超ラッキーというレベルの学校。
ホッとしたような、最後だから気合を入れているような、どちらともいえない様子の息子。
私も特に話しかけません。
もうすぐ電車を降りるという頃、息子は塾の鉢巻を取り出してリュックに固く結びつけていました。
塾の先生や友達、みんなのメッセージが書かれた宝物。
ふと前に目をやると前の座席の子も同じことをしてます。
みんな同じ気持ちだよね。
学校に着くと、いつものようにおまじない。これが最後のおまじない。
いつも以上に気合が入る私。
そばでそれを見ていた知らないお父さんが、笑っていたみたいだけど、
そんなことはもうどうでもいい。
そして最後のお見送り。このたった三日間だけでも息子の背中がずいぶんたくましくなったように
感じました。
私は控室でしばらく過ごした後、デパートへ行き、オットと娘と待ち合わせ。
娘のちょっとした用事を済ませ、オットは息子を迎えに、私は娘と帰宅。
最後のお迎えはさせて欲しいという、オットからの申し出があったので。
きっと二人で話したいこともあったのでしょう。
帰宅後、昼食。何を食べたか思い出せないほど、落ち着かずドキドキ。
ふう。さて、いよいよ私一人、一日校へ向かいます。
学校のある駅でオットと息子と合流。
いつものように「絶対に受かってる」と繰り返しつぶやく私。
学校に着くと、すでに門の外には発表を待つ列。
開門までひたすら待ちます。なんて嫌な時間なんだろう。
その間、何回も天を仰ぎ。
20分ほどするとついに開門。
掲示板の目の前に走っていく息子、でもまだ貼り出されてされていませんでした。
ここでさらに待つこと数分。ここからがもっともっと嫌な時間。
私は空を見上げ、ひたすら天国の祖父母に手を合わせました。
「どうか受かってますように。あんなに頑張ったんだもん。
きっと受かってるよね。」
ところが空の向こうの祖父母の表情が浮かない気が。
気のせいか曇り顔。
「気のせいだよね。お願い!おじじ、ばばちゃん!」
そしてついに貼り出され、ざわめきます。
その数秒後。
後ろにパッと振り返る息子。泣くのを必死にこらえている形相。
私もすぐさま確認。
そしてそこに
息子の受験番号は
ありませんでした。
私はとっさに息子を抱きしめたまま、人ごみから少し離れたところに移動。
そのまま思いっきり抱きしめました。
ただただ、抱きしめるしかありませんでした。
嘘?嘘でしょう?どうして??あんなに頑張ったじゃない。
色んな思いがめぐります。でもここで私が泣くわけにいかない。
これが現実なのです。
必死にこらえました。
そして小さな声で息子に言いました。
「補欠番号も見てみよう。」
息子はそうだ!と我に返り、ものすごい必死の形相で補欠番号が貼り出されているところへ。
この数秒間、私たちはわずかな、最後の望みにかけました。
でも
番号はありませんでした。
やっぱり無かった。
不合格です。
その後放心状態で駅に向かう途中、ふと、きちんと受験票と照らし合わせながら
番号を確認していないことに気づきました。
「ねえ、もう一度最後にきちんと見ておこうか。」
「うん」
再び校舎に戻ります。
どんでん返しなんてことは無いとわかっていたけど。
そこには、先に発表を見に来ていたお父さんとガッチリ握手をしている子。
塾のインタビューに応えている子。
塾に合格の報告電話を嬉しそうにしている子。
そんな子たちがいる中、その間を抜けて、息子はもう一度掲示板の前へ走りました。
でもやっぱり、息子の番号は無かった。
わずか12歳の少年には、なんとも残酷な瞬間でした。
でも現実をしっかりと受け止めることも大切。立派でした。
重い空気のまま、駅に向かいます。
歩きながら、私から塾に電話。
「すみません、残念ながら合格はいただけませんでした。
でも、本人も全力を出しきったと言ってますし、私も試験が終わったときに見せてくれた
あの笑顔をみれて、本当に幸せでした。悔いはないです、三年半ありがとうござい・・・。」
最後の方は涙があふれて言葉になりませんでした。
そのあと、数年前に引っ越した、幼稚園のときの親友とすれ違いましたが。
彼が合格したかどうかはわからない。
でも、合格していて欲しいと願いました。
帰りの電車、しばらく無言。
私はゆっくりと息子に話し始めました。
「お母さんはさあ、あのとき、君が校舎から出てきたとき、本当に素敵な笑顔をしていて、
あんな笑顔は初めてで、心の底から幸せに思った。ああ、三年半、頑張ってきてよかったな。
この笑顔のために頑張ったんだなって。お母さんは誇りに思うよ、ありがとね。」
息子は目に涙を浮かべて黙ってうなづいてくれました。
途中の駅に着いたとき、息子の叔父(オットの義弟)から電話が。
一番身近で大好きなお兄ちゃん。息子は明らかにホッとしていたし、
嬉しそう。ナイスタイミングで、本当にありがたかった。
やがて我が家の最寄駅につき、不合格がわかって即、
二日校の入学手続きに行っていたオットと合流。
少しずつ息子の表情が明るくなり始めました。
そんな息子に私は言いました。
「ようこそ!お母さんの母校へ」
そう、息子が通うのは私の母校。
にこっと息子は笑いました。
そのまま駅をフラフラしていると。母から電話。
「今日はすき焼きにするよ。最高級のお肉を買ってきてね!」
「もちろん!」
みんなでデパ地下のお肉売り場へ。
気もちは徐々にすっきりしてきました。