「こごえそうって、なに?」


「寒くて凍ってしまう…氷…あぁ…」


そういうことか。
 

「なに~?」


「クマがね、凍ってしまいそうなんだよ」


「くまちゃんが?こおる?」


「ミナ、氷はどこにある?」


「れいぞうこ」


「うん、そうだね」


「えぇ?」


目を真ん丸にして聞いてくる。


「きっと冷蔵庫で、クマが冷えてるよ」


「なにそれ~?」


ホント、何だそれ。


何のクマなんだろう。


「助けに行く?」


「いくっ」


「よし、行くか」


ミナを抱き上げると


「グゥ、まただっこ?」


何となく


くっついていた方が安心するから。


「嫌だった?」


「イヤじゃないよ。だっこしてもらうと、すっごくうれしい。でも、つかれない?」


まだ気にしてる。


「ミナ軽いし、この方が楽しいよ」


「…あの…ね…」


「ん?」


「ぼくが、おおきくなっても…ときどきでいいから…こうしてだっこしてくれる?」


「いいけど、どうしたの?」


「ジミナに、ないしょね」


「うん」


「ジミナね、きっとグゥにあまえんぼ、したいとおもってるから」





それが本当ならすごく嬉しい。


すぐにお兄さんぶるジミナが


どうしたら年下の僕を頼ってくれるのか


いつも考えていたから。


それならジミナが


もし嫌だって言っても


僕は抱っこして下ろさないよ。





「ミナ、ジミナのこと…わかる?」


「うん。ぼくとジミナはね、おなじきもちなのがわかるよ」


「そうか…」


「ぼくとおなじこと、きっとおもってる。がまんしなくていいよねっ。だからね、おもくても、ときどきはだっこしてね」


「わかった、約束するよ」





ミナの話を聞いていて


急に目の前が晴れたような気がした。


なんだ。


すごく簡単なことだったんじゃないか。


ジミナが我慢する暇がないくらい


マンネの特権で


僕のワガママで


いつでもジミナにくっついて


離れなきゃいいんだ。


ジミナの不安な気持ちごと


僕が包んで離さなきゃいいんだ。


そうすれば


きっとさみしくなんてならない。


そんなことを


ジミナが思う暇はなくなる。


今までの悩みは


何だったんだろうと思うくらい


気持ちが軽くなる。


答えはいつもシンプル。


本当に大切なことだけを残せばいい。


ミナが僕に教えてくれた。





「ミナとジミナのために、もっとたくさん運動して、もっと力持ちになるね」


「ムキムキになる?」


「頑張るよ」


「ジミナもね、ムキムキすきだよ」


知ってるよ。


筋肉マンなマッチョも


マーベルの映画のヒーローも


背が高くて柔らかい雰囲気の人も


好きなんだよ。


僕は毎日牛乳を飲んでる。


「ぼくはいまのグゥが、だいすきだけどね」


「なんだよ、可愛いこと言ってくれるなぁ」


「じゃあ、おんぶしてっ」


「おねだり?」


「うんっ」


「可愛いから、しょうがないな。OK、じゃあミナ、僕の首に掴まって後ろにいける?」


「いけるっ」





ジミナもおんぶが好きだ。


よく僕の背中に飛び付いてきて


そのままおんぶしていた。


ジミナの優しい声が近くて


くすぐったい幸せ。


それは僕の日常の


幸せの一つだった。


あまりにも当たり前だった。


そんな幸せは毎日たくさん


僕のそばに溢れていた。


ミナの存在は


学校やスマホじゃ学べない


大切なことを


僕に教えてくれているみたいだ。





「よ~いしょっ」


僕の手の平にミナの足を乗せて


少し押し上げてやると


ミナは器用に背中にスルッと移動して


おんぶになる。


「たかいよ~♪」


そうして


ご機嫌なミナを背負って


また一階へと降りた。





「ヒントみつけたよー」


ヒョンたちにミナが報告すると


「何処にあるか、わかったの?」


「グゥがね、わかったんだよっ!」


「えっ!?」


「冷蔵庫でしょ?」


「えぇ~っ!?ジョングガ、わかったのか!?」


「本当か!?」


「偉いじゃないか」


ひどいよね、ヒョンたちは。


こうして


すぐ僕をからかってくるんだから。


でも誉めてくれるから


僕はやっぱり嬉しくなって


どんなにからかわれても


怒ったりする気持ちにはならないんだ。





大きな冷蔵庫の前まできて


届かないミナを背負ったまま


そのドアを開けてみると


わかりやすく


真ん中にクマがいた。


「くまちゃんだ…」


スワロフスキーのクマ。


キラキラと光るクマ。


「きれいだけど、かわいい~っ」


可愛いけど


クマ?


僕はこれを選んだかもしれない


一人のヒョンが思い浮かんだ。