その日、私は天に誓った











夫と共に三姉妹を連れて、お盆の帰省のため、

義実家へと向かう



今夏も無事に、三姉妹の成長を義父たちに感じてもらえる…





はつらつとした声が上がっていると思いきや、

一転して、喚き騒ぐ


日々くっついたり離れたりと忙しい

気質は逆行しているけれど、何故か三人揃うと心地好く回る歯車から清明な音色が溢れ出す



義父たちの前でも、この三名のキャストによって絶妙な新劇が繰り広げられ、心は平安で満たされることだろう…



夏の任務完了を目前に控えた私のこころは軽やかだ




京都駅からはるかに乗車し、関空へ到着



娘たちは、これから搭乗することと義父たちとの再会に、胸を高鳴らせている







高揚感を纏った一家五人は、

機内へと進んだ






三列席に、窓側から夫、末っ子、私

通路を挟んで、次女、長女

と着席



機体のドアが閉まり、

CAさんが乗客のベルト、背もたれ、シェード等を確認していく



末っ子は2歳1ヶ月

先月、末っ子を含む家族みんなでインドネシアに住む友人を訪れた

あれから、ちょうど一ヶ月


飛行機に乗ったことは覚えているだろう

だから、これから成田空港まで、きっと快適な空の旅となるはずだ



「ベルトしておそらとぶよ〜(満面の笑み)」

末っ子にゆっくりと語りかける

そして、優しく気持ちを込めてベルトを閉めようと手を伸ばす




ところが、





その手を突っぱねられた





ベルト装着を

拒否





無言で下を向き、頭を横に何度も振る

不機嫌な様子の末っ子








・・・うん、でもきっと大丈夫

「ベルトをしたらおそらとべるよ〜(満面の笑み)

たのしみだね(満面の笑み)

じいじのおうちにいけるよ〜(満面の笑み)」

ゆっくりと語りかける





ところが、



再び、

拒否





CAさん「ベルト、カッチンできるかな〜?

こうやって、こうやって、わあ、できたね〜(パチパチ)(満面の笑み)」



CAさんが去ると、


ベルトから擦り抜ける




夫と私は、

出来る限り機嫌が良くなるように気を配りながら、

何度もベルトを閉めようと試行錯誤(汗)


スマホの写真を見せたり

ダウンロードしている動画を見せたり

座席ポケットに入っている雑誌を広げて話しかけたり…




それでも


拒否…






まぁ、、大人しく座ってさえいてくれれば…





CAさん再来


「ベルトを嫌がられる場合は、

大人の膝の上でお子様を抱え、こちらのベルトをお締めください」

幼児用ベルトを渡される




・・・膝の上で、きっと落ち着いてくれるだろう・・・




「じゃぁ、おかあさんだっこしよっか(満面の笑み)」






末っ子を抱えた途端…






機内に響く大音量の泣き声





末っ子は反射的に私の手を振り払い、

夫の膝の上で号泣



「だいじょうぶだよ、

だいじょうぶだよ、

ベルト、カッチンするだけだから(汗)」



何度も言い聞かせようとするが、

叫び続ける末っ子には、如何なる言葉も響かない



長女と次女は、自身のリュックに入れてきた玩具で末っ子をあやそうとしてくれるが、

その甲斐なく、泣き止む気配は全く無い








そして、その声量は、

収まるどころか力を増していく







乗客たちの視線から滲み出る重圧に耐えながら、

落ち着かせようと必死になる


同時に、焦る気持ちも、

激化する




なんとかしなければ…

なんとか







一刻も早く、号泣している娘を連れてこの場から立ち去りたい

外食時であれば、抱っこして店外へ出て気分転換させることはできるのに





しかし、





ここは機内







外なんかには出られやしない

ましてや、抱きかかえて立ち上がってあやすことすらできない

離陸寸前、タキシングの最中である





もう…






無理…




機嫌を取るとこは不可能だ…







ギャン泣きの娘をあやすことを諦めたと同時に、


機体は、対気速度を急激に上げ、

揚力を得た









その瞬間、








あのテーマが浮かんだ…









「乗客は飛行機で寛ぎたいのだから、赤ちゃんを乗せるべきではない」

「赤ちゃんだって飛行機に乗る権利はあるはず」



あぁ、これだ

赤ちゃん連れの親にとって課題となる、

例のテーマ…



まさか

当事者になるとは…




機内に響き渡るのは、我が子の泣き声…

信じられなかった





「どうして今回末っ子の飛行機対策まで気を回さなかったのか…

ジャカルタ行きの時は、

普段食べさせていないラムネやお煎餅、

100均のシール遊びブックを準備したのに…

今日関空に着いてから搭乗までの間、

何か気を引くようなものを買う時間は十分あったのに…」



大号泣の末っ子を見ながら、自分を責め続けた

なす術もなく、こちらが泣きそうになる



末っ子が初めにベルトを拒否するまで、

飛行機対策を忘れていることさえ気付かなかった

愚かな自分





しかし

言い訳になるが、、

今回は帰省10日前に長女が溶連菌を発症

3、4日前から長女と次女が珍しく皮膚炎を起こし、

義父たちに会う頃までになんとか回復してほしいと願う日々だった

長女、次女の体調に気を取られ、

末っ子の飛行機対策は、ノーマークのまま搭乗してしまった



三姉妹を連れた母親が、

2歳の娘を泣かせてしまっているこの光景を

周りの乗客はどんな感情で眺めているのだろう





CAさんや乗客に迷惑をかけてしまった罪悪感、

ここまで号泣してしまったからには、もはや気分を快復させるなんて不可能だという失望感、


胸が切り裂けそうだった





末っ子は、15分ほど号泣

機体は程よく揺られ、巡航高度に達し、

夫の膝の上で眠りについた




そもそも2歳児と搭乗するというのに、配慮を怠った私に全ての落ち度がある

迷惑を被った全乗客に謝罪したい気持ちでいっぱいだ



そして…

徐々に寂寥感に苛まれていった




窓の外を眺めても、

心配そうにこちらを見つめる長女と次女に対して、笑みを返しても、

どこか、感情が伴わず、身体の中が空洞となっていった…









しかし、

自分をどれだけ責め続けても、

後悔し続けても、

解決するわけではない


もう過ぎた過ちは書き換えることはできない








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