水底の月

水底の月

恋の時は30年になりました 

身体を合わせた時のことを良く覚えてない。


そんな余裕はなくいつも言うけど必死で。

覚えているのは気持ちいいだけ。

そう言うと、sanaはちょっと睨むような顔をする。



「全然覚えてない?真っ白?いきなりガバッと記憶が抜け落ちるってこと?」

「・・・そういうこと、でもない」

 

「じゃどういうこと?覚えてないって何を覚えてないの?」

 

「全部」

 

「・・・また。やってきた経験値というか、私に前回こうしたらこういう反応が返ってきたから、ああ気持ちいいんだろうな、じゃ次回もとか」

 

「ああ、それは覚えてる」

 

「ホラ!覚えてるじゃない。じゃ、どの感覚で覚えてるの?」

 

「どの感覚?・・・例えば」

 

「視覚、聴覚、触覚・・・どの感覚で覚えてる?どこで一番私を感じてる?二番目は?」

 

「うん!?」

 


そもそも

SEXを五感で分解し、どの感覚で一番二番・・・を考えるのも、おかしなことじゃないかと思うけれど。

sanaとのSEX談義はイッた良かったではなく、そういう分析めいたところにひっぱられていく。


sanaの考えそうな視点というか、僕は考えたこともない不可思議な疑問に苦笑するけれど、sana的には「僕がその時のことを覚えてない」のは理解に苦しむようで。「覚えていない」を分析したい、と言うところだろう


「まず一番は視覚・・・聴覚もそうかな、sanaの声や身体・・・。五感の中でいくと、視覚優位で記憶に残るのかもしれないね。・・・だから言ってるのに、時々写真とか動画を送って、って」

 

「もうっ、またそっちへ話を持っていく!。じゃあ・・・それなら、私を見て私を気持ちよくしてる時のことは覚えてるってこと?逆に雅治が気持ち良くなり始めたあたりから覚えてないとか??」


 

 

 

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