2月3日と4日、シアター1010で上演された「十五少女漂流記」に行ってきました。


公演期間は下北沢のシアター1010で2月3日~2月6日、海老名市文化会館で2月23日の、全7公演です。うち、3日の初日と4日の夜公演に行きました。
制作のクオリティが高く、ストーリーもわかりやすく前向きなお話なので、大人が見ても、家族連れでもワクワク、ドキドキ楽しく見られるお芝居です。
登場する「少女」15人のそれぞれにキャラクターがあって、キャストが活き活きと命を吹き込んでいるのが魅力的でした。オープニングの歌とダンスがYouTubeで公開されていますので、そちらで雰囲気がわかります。

 

以下、ネタバレ注意。まずは、公式ページ掲載のあらすじ等を載せておきます。
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脚本・演出 久保田唱  主催:舞台『十五少女漂流記』製作委員会

 

1860年2月。
ニュージーランド・オークランドに住む少女たちは、夏休みに船旅を楽しむ為に『スルーギ号』に乗り込んだ。
だが出航前夜、船での宿泊の予行練習も兼ねて泊まったその夜に事件は起きる。
少女たちだけが眠るその船がいつの間にか沖まで流されてしまったのだった。
船に乗っているのはオークランドの女子校に通う十四人の少女と、一人の船員見習いの女の子のみの十五人。
外海に流され、更に嵐を超え、辿り着いたのはどこともわからぬ無人島だった。
年下の幼い子供達を引っ張るブリトニーに対し、元々学校一の優等生であるドルチェはライバル視し、度々ぶつかってしまう。
しかし少女たちだけで暮らすその島に、人殺しの犯罪集団が流れ着いて・・・
突如遭難し、無人島生活を余儀なくされた少女たちが、波乱を乗り越え、母国に帰りつくことを目指す物語。

ジュール・ヴェルヌが1888年に書いた有名な冒険小説「十五少年漂流記」を原作に、登場する15人の少年を「少女」に置き換えた演劇です。ストーリーも原作に忠実に展開し、時代背景や登場人物の設定も基本的にはそのままですが、「女の子」のお話にしたことで、原作とは違った輝きを持つ作品になっていると感じました。
アイドル(「卒業」した子を含む)や若手女優でキャストを揃え、しかも、可愛い子ばかりなので、それだけで華やかさがありますが、女の子たちが特技を活かし、協力し合って困難に立ち向かう姿は、明るい力に溢れていて、とても現代的な感じがしました。15人の人間模様も「少年」より繊細で複雑な陰影を感じ、登場人物の関係性について物語に描かれない部分にまで想像が膨らみました。
シアター1010の劇場はきれいで広く、音響も良くて、ステージに組まれたセットも立派でした。ミュージカルではありませんが、お話をつなぐように15人の歌とダンスが数曲織り込まれていて、アイドル出身者が多いキャストたちによるパフォーマンスが楽しめます。また、ところどころ、プロジェクションマッピングが効果的に使われていて、オープニングには感動しました。全体的にきちんと予算をかけて、丁寧に作り込まれた演劇だと感じました。

15人の漂流の物語は、ブリトニー、ゴディバ、ドルチェの3人の上級生を中心に展開します。リーダーシップがあり、勇敢で賢明、そして優しく仲間思いという、とてもヒロインらしい主人公のブリトニーをAKB48の元メンバーの太田奈緒さんが、まっすぐに演じていました。一方、最年長で思慮深く、みんなをまとめるゴディバを演じたのは、ラストアイドルにいた大森莉緒さん。頼りになる補佐役で、安心できるお姉さんという印象です。
そして、浜浦彩乃ちゃんが演じたドルチェは、イギリスの資産家の娘で「姫」と呼ばれる学年一の優等生。負けず嫌いでプライドが高いので、みんなから頼られるブリトニーに対抗意識を持ち、事あるごとに反発します。取り巻きと一緒に派閥を作って勝手に行動するなど、いわゆる「敵役」なので、これをどう演じるかがお芝居を決める重要な役です。はまちゃんは「嫌な子」ではなく、勝ち気さゆえに強い態度に出てしまうドルチェを魅力的に演じていました。高い身長とステージ映えするスタイルの良さも「姫」らしく、歌とダンスでは圧倒的な力量を見せてくれました。


はまちゃんが準主役の舞台ですが、私が予約などで「応援するキャスト」として選んだのは鹿沼亜美ちゃん。今回演じたサハンは下級生の一人で「親は科学協会会長で理科が得意。秀才」という設定。クイッと眼鏡の端を上げる仕草が特徴で、眼鏡がよく似あっていました。植物や気候などの科学の知識は、無人島の冒険には欠かせないため、知識を披露する場面が結構あり、クールに堂々とした博識ぶりを見せる一方、普段は大人しい感じなので、現代なら「科学オタク」とか呼ばれてしまいそうです。つまり、普段の亜美ちゃんのキャラとは真逆の役柄でしたが、しっかりサハンになっていました。キャストで一番背が小さいので、その下級生らしさも可愛かったです。
ちなみに、植物の知識は原作ではゴードンつまりゴディバのものです。15人それぞれに特技・特徴を持たせるために、他の役でもそうした設定の振り替えが行われていました。物語をわかりやすく伝えるため、船主の娘ガーネットを記録係にして、その語りで繋いでいるのも良かったと思います。こちらは声優の藤井彩加さんが演じていて、文系少女好きはハマりそう。

東宝芸能からはもう一人、PiXMiXのメンバーである霧島十和子ちゃんが「牧師の父を持つ娘。下級生の中では秀才」という設定のアイビー役で出演していました。下級生らしい、みんなから可愛がられている妹キャラで、生格も穏やかで優しい癒し系。こちらは、普段の十和子ちゃんのイメージどおりで、ピッタリの役でした。

終演後に舞台でアフタートークショーがありました。
2月3日の出演メンバーは太田奈緒、石森虹花(ケープ)、春名真依(クロス)、桐島十和子、中武明佳理(ドール)で、進行は太田さん。中武さんは、本作が舞台初主演とのことでした。
「自分の役以外でやってみたい役」を聞かれてドルチェと答えた十和子ちゃん。「でも、そう言ったら、サハン役の鹿沼亜美ちゃんに絶対ムリだって言われました」とのこと。東宝芸能の先輩後輩がここでも仲が良さそうな様子が伝わってきて、ほっこりしました。太田さんがやってみたいのはアイビーかドールで、アイビーは演技中の仕草が可愛いからとのこと。
アフタートークでは関西弁になる太田さん。京都出身なんですね。責任感が強いブリトニーと違って(笑)途中で進行を春名さんに投げると、「座長命令なので…」と受けた春名さん、後半からしっかり進行していました。
後半のトークテーマは「無人島に着いて最初にやること」。石鹸を探す、釣り竿を作るといった回答に続いて、十和子ちゃんは「真水を探す」と言って、結構しっかりしているところを見せていました。締めくくりの挨拶では一人ずつ、観客への感謝と、初日にふさわしく舞台にかける意気込みを述べました。

2月4日ソワレの出演は、浜浦彩乃、堀越せな(ジェニファー)、天音みほ(モコ)、鹿沼亜美、あやかんぬ(コスタ)で、進行ははまちゃん。亜美ちゃんはあやかんぬさんと2人、お笑いの雰囲気で登場し、最初のあいさつで「鹿沼の沼にザッブーン!」を決めてくれました。
最初のトークテーマは「開演直前までの時間は何をしているか?」
マチソワの間に、楽屋でジェネレーション・ギャップの話題で盛り上がったと言う亜美ちゃん。楽屋が違うはまちゃんにも声が聞こえたという話に、その様子が目に浮かびました。はまちゃんは稽古中にハマったゲームをやっていると言い、そのゲームがキャストの中で流行りはじめているとのことで、意外なところでリアル「姫」ぶりを覗かせていました。そのゲームは段違いに天音さんが上手いそうです。
「無人島で自分がリーダーになったら心掛けること」というテーマで、魚が嫌いなはまちゃんがドルチェと同様、率先して鳥を取りに行くと言うと、あやかんぬさんが「みんなの食の部分を司ろうと思う」とこちらもコスタのよう。「私はサハンと違って知識はないので、みんなが気持ちを落とさないように、ずっと喋っている」と亜美ちゃん。
秘密を抱えているためにお転婆な性格を見せないジェニファーを演じた堀越さんですが、アフタートークでは明るく元気な様子を見せていました。サハンと真逆で、実は元気で賑やかな亜美ちゃんをはじめ、キャスト本人と役とのギャップも見ることができました。
最後は、規制退場を兼ねてアフタートークショーに出演したメンバーが、舞台上から観客をお見送り。
最後の挨拶で亜美ちゃんがYouTubeチャンネルのことを話していたので、掲載しておきます。

 

出演
ブリトニー:太田 奈緒、ゴディバ:大森 莉緒、ドルチェ:浜浦 彩乃
ケープ:石森 虹花、ガーネット:藤井 彩加、クロス:春名 真依、ジェニファー:堀越 せな
モコ:天音 みほ、メリッサ:優希 クロエ、サハン:鹿沼 亜美、アイビー:桐島 十和子
ストール:尾崎 明日香、コスタ:あやかんぬ、ドール:中武 明佳理、ウェル:安井摩耶(2/3、2/4)
エヴァンス:添田翔太、ケイト:松木わかは
アンサンブル:乙木勇人、山本海里、石田祐輔、J.U.N.