犬童一心→大島弓子 | なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO

なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO

ジャンルは主に、映画・音楽・文藝・マンガです。
僕の好きな人物、作品をWHO'S WHO形式でご紹介します。



なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO


いきなり自慢。大島弓子先生の直筆サインです。僕の宝もの。

「綿の国星」LP発売当時、記念のサイン会があったのです。忘れもしない東武デパート屋上特設ステージ。

メディアでは絶対ご尊顔を拝見できない先生のこと、これが最後のチャンスとばかり馳せ参じました。
先生はなんとチビ猫のエプロン着用で登場し、大歓声を浴びてました。ほんとに「さかさ食パン」だったので、
おーっ!となって、ちょっと笑いました。優しそうなひとだったなあ・・・

ちなみにこのLPは全曲が、作詞は先生ご本人、作曲演奏ムーンライダース、ボーカル松尾清憲という

ゴーカ企画盤でございます。



なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO 閑話休題ってんで、おーし書くぞー!つってPCに向かってガクゼンとしました。

書けない、これは書けない・・・どっから手を付けていいものやら・・・

とにかく僕の諸々を一掃したひとなんで、長くなるのを覚悟で、いっそのこと

デビュー作から時系列で書こうかとも考えたんですがやめました。

大島弓子専門ブログになってしまうので(^_^;)


萩尾望都山岸凉子と並び、男性ファンも非常に多い作家ではあるんですが

男の悪いクセで、作品分析なんかしちゃってるやつがたくさんいるわけで、

ここでは極力そんな無粋なことはせず、単なるミーハーとして書きたいと思います。

なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO この「ジョカへ・・・」あたりからほぼリアルタイムで読んでたんですが、

「ミモザ館でつかまえて」「野イバラ荘園」、そして忘れちゃならない

「なずなよ、なずな」(これ含め母以外の人間が育児に苦闘するのが多いのね、

「ヨハネが好き」とか「七月七日に」とか)「海にいるのは・・・」とか

続けざまに読み進むうち(このへんの作品は、たしかほぼ一年のあいだに発表されてるはず、異常な充実!)「これはただ事ではない!」と、ざわざわしていたところへあの

「全俺が泣いた」「いちご物語」(森太郎兄さん、同性ながらちょっと憧れました。

おおかみマンも良)そして、その後の展開を予告するような「F式蘭丸」です。


なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO なんか作品名の列挙になってますが、書き漏らしがありそうだなあ・・・

まあタイトル列挙ばっかもしてられないんで、ちょっと書いてみますが、あらためて

年代順に続けて読んでみると、このへんがひとつの転機だったのではと思います。

デビュー作「ポーラの涙」から彼女は、それこそ木原敏江と並び称される

「泣き」の作家だったわけですね。もちろん、それは「F式」の後も「ヨハネが好き」

(やすべえ!)や 「さようなら女達」(海辺で叫ぶとこなんか滂沱の涙)はじめ、

「泣きの大島調」は連綿と続くわけです。

しかしこの「F式」において、その異様なネーム(つげ義春谷岡ヤスジ


なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO 比肩する!)、フキダシに入るセリフの多さ、そしてとりわけ精神分析含めた心理学の

援用(なんつっても「F式」のFってフロイトだからね)、といった、その後の彼女の

独自性を特徴づけるものが顕著になったと思うわけです(なんか分析してますか?)。

ここからはっきりと彼女は「知的な作家」と見なされたのではと思います。


そして、問題作であり代表作と目される「バナナブレッドのプディング」

なんですが、これに大ショックを受け、ファンになったひとも多かったみたいですね。

とにかく異様なお話なんですね。どれくらい異様か、ちょっとプロットを書いてみます。



なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO
「イライラの衣良」こと三浦衣良は、「世間にうしろめたさを感じている男色家」と

結婚し、彼が世間に胸を張って生きられるようリハビリに付き合う、という願望があり、

それはヤバいと考えた親友御茶屋さえ子が自分の兄(ストレート)を

男色家に仕立て、3人の奇妙な結婚生活を始め、衣良もそれなりに安定してきます。

男色家の恋人がいないと変だろうてんで、偽装恋人に立候補したさえ子の同級生

奥上は、ほんとに峠を恋してしまい、さえ子はというと、あろうことか、もともとその

奥上に密かに恋心を抱いていたんですね。

実は奥上にはサディストの大学教授の恋人(峠の行ってる大学。もちろん男)である

新潟という存在があり、これがもうほとんどストーカーでDVなんかもあったりして。


奥上の心が離れたのを知ったは新潟は策略をめぐらせます。

ひょんなことからカラクリを知ってしまい、ショックを受けている衣良の奇妙な願望に乗じて、

「実は自分こそが『世間に後ろめたさを感じている男色家』なのだ」と偽り、

ドサクサに紛れて衣良を自宅に連れ込んでしまう・・・なんてことだ!


それにしても、よくもまあここまで複雑怪奇なお話を考えるもんです!

「ライナスの毛布」や「ドッペルゲンガー」といったターム、

「血がフリーズドライ化するほどの恐怖」みたいな特異なフレーズ、

はたまた、さまざまな論議を呼んだわけわからんラストなど、

「ああっ、これはなんとしても解釈したい!」という欲求にかられたりするんですが、

僕はただただボー然としてるだけでいいんで。



なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO いずれにせよ、この作品によって彼女は、マンガファン以外の

多くの読者からも、完全に「知的な作家」として認知されるに至ります。

加えてこの時期、いわゆる24年組を中心とした少女マンガは、

完全に少年マンガの上位に君臨していたはずです・・・


ということで、気がついたらこんなに書いてますが、まだ

「綿の国星」その他もろもろがある!書き足りねえ~てんで、

今回だけ異例中の異例ということで、パート2いきたいと思います。

なんだかんだ言って、結局時系列みたくなってんなあ・・・