『エル・クラシコ』
それは、世界最高の歴史、選手、実績を持つリーガ・エスパニョーラの2チームによる、ジョゼ・モウリーニョに言わせれば、「世界中の時計の針が止まる試合」である。
レアルマドリー、バルセロナ。世界を代表するこの2チームによる戦いはその地域性、文化、歴史からかスペインを2分する、ある種のフットボールの戦争である。
《ここまでのリーグ戦》
★バルセロナ
昨シーズン無冠の屈辱から脱するべく、ルイス・エンリケを新監督に迎えたバルセロナは新戦力が見事にフィットし、ここまでリーグ戦首位、無敗、無失点を記録している。新戦力ラキティッチ、マテューはいずれも昨シーズンのバルサになかったスピード、運動量、高さを補っており、彼らの活躍が今のバルサを押し上げていると言ってもなんら過言ではない。ネイマールも昨シーズンから大きく成長し、ゴールを量産している。また、何よりも大黒柱メッシが好調を維持しており、敵地ベルナベウでリーガでの得点記録を塗り替えそうな勢いである。
★レアルマドリー
デシマ達成から時は経ち、ハメス・ロドリゲス、トニ・クロースらが新加入し、同時に功労者アンヘル・ディマリア、シャビ・アロンソはそれぞれマドリッドを離れた。シーズン開始直後こそ攻守のバランスを乱し、簡単にゴールを陥れられたが、老将カルロ・アンチェロッティによる絶妙なアジャストにより、チームは少しずつバランスを見いだしてきた。こちらもクリスティアーノ・ロナウドが異次元の得点力を発揮し、銀河系軍団に見合う攻撃力を誇っている。
《両者の狙い》
★バルセロナ
今シーズンから再び導入されたハイプレス&ショートカウンターを軸に、ポゼッションを加味していく戦い方になるだろう。今年のマドリーがポゼッションに比重を置いているこたから、バルサ側の狙いとしては中盤でのボール奪取になるだろう。守備面では相手攻撃陣の速さへの対応が最重要項目となる。SBが高い位置取りをする今のバルサにおいて、カウンターをもろに喰らうと対応しきれないだけに、浅い位置でのボールロストや緩いプレスは命とりになるだろう。今回、相手にシャビ・アロンソのようなタイプの中盤がいないことが想定されるだけに、バイタルの前をどれだけ支配出来るかで、試合は決まりそうだ。
★レアルマドリー
マドリーには2つの選択肢がある。1つはボール前、バイタル付近を封鎖し、ロナウドのスピード、空中戦にかける方法。もう1つはクロース、モドリッチ、イスコを中心にポゼッションを試み、真っ向からバルサにぶつかる方法。幸いなことに知将アンチェロッティはこの2つの選択肢を上手く組み合わせる術を持っている。恐らくアスレティック・ビルバオ戦のように、前線から積極的にプレスをかけていき、中盤のメッシ、ラキティッチ、ブスケツのあたりでボールを奪取し、ショートカウンターを仕掛け、相手のポゼッションが続く時は引きこもり、ロングカウンターを狙う展開だろう。お手本にすべきはPSGの戦い方で、アンチェロッティも必ずあの手法を採用するに違いない。バルサのプレスをかわせるだけの技術を持った選手たち、“高さ”という武器を使わない手はない。
・結論
両者ともに中盤、DFラインに激しいプレッシャーをかけ、ショートカウンターを狙うだろう。ただ、バルサの場合押し込まれると相手の攻撃を防ぎ切れないだけに、そこでマドリーとの差が出るのか。しかしながら、ポゼッションからの崩しにはバルサとマドリーにおいて“絶対に埋められない差”があるだけに、バルサにとっては不用意なボールロストを避けることがそのまま失点を避けるということになりそうだ。
《個人的希望スタメン》
ここではメディアで報じられるラインナップとは違った、筆者の個人的なスタメン選考を述べさせて頂きたいと思う。
★バルセロナ(4-3-3)
GK:クラウディオ・ブラボ
CB:ジェラール・ピケ、マスチェラーノ
RSB:ダニエウ・アウベス
LSB:マテュー
DMF:ブスケツ
CMF:イバン・ラキティッチ、イニエスタ
CF:メッシ
WG:ネイマール、ルイス・スアレス
あくまで個人的な希望である。中盤のチョイスは難しい。そこにはシャビ、マスチェラーノも入りうる。ここ2試合、マスチェラーノは中盤の底でプレーしており、その質は素晴らしいものである。密集地でのボールキープこそブスケツに劣るが、その他の面では何ら劣らない。ボール奪取や、寄せの速さではブスケツに勝る。シャビもアヤックス戦がベンチだったことが、クラシコでのプレーを暗示しているような気がしなくもない。3トップの右にはムニール、ペドロといるが、ここではスアレスを推したい。(まず筆者の中でペドロは論外なのである。)スアレスを使う上での不安な点は連携面、コンディションだが、親善試合でも2得点したようにそちらの面は心配無用だろう。連携面に関してはトレーニングの中でしか培われないものだが、ルイス・エンリケを始め様々な選手たちがGOサインを出してるところから、こちらの面もOKと捉えていいだろう。超一流は簡単に超一流とプレー出来るものだ。残るポイントはCBのマスチェラーノorピケだが、スピード面ではマスチェラーノ、高さ面ではピケだ。筆者は両者を共存させるこのシステムを推奨した。ヴェルマーレンが復帰していれば、話は大きく変わってくるのだが。
★レアルマドリー(4-4-2)
GK:イケル・カシージャス
CB:セルヒオ・ラモス、ペペ
RSB:カルバハル
LSB:マルセロ
CM:クロース、モドリッチ
RM:ハメス・ロドリゲス
LM:イスコ
CF:カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド
ギャレス・ベイルが招集メンバー外となった今、筆者だけだなく、万人の予想はイスコ起用であり、ハメスの右WGが機能するとわかった今、クラシコへのメンバー選考はこれで間違えないはずである。アンチェロッティが4-4-2と明言してる中、このフォーメーションの弱いところは紛れもなく、クロースとモドリッチというフィルター役とはほど遠い2人で形成されるバイタル付近の守備である。ここをペペ、セルヒオ・ラモスと封鎖することが勝つための条件であり、バルサにメッシがいる以上、ここを塞がないと、大火傷するだろう。そこで大切なのがアンチェロッティも繰り返し言っている『チーム全員での守備』であり、クリスティアーノも必要ならば走って守ることになるだろう。攻撃面では 攻撃はショートカウンターで相手両SBの裏を狙う展開になるだろう。
《客観的スタメン》
ここでは個人的な希望を排除し、あくまで客観的にラインナップを考えてみたい。
★バルセロナ
GK:クラウディオ・ブラボ
CB:マスチェラーノ、ピケ
RSB:ダニエウ・アウベス
LSB:マテュー
DMF:ブスケツ
CM:イニエスタ、シャビ
CF:メッシ
WG:ネイマール、ペドロ
リーグ戦で3試合連続でシャビが出ていること、先日のアヤックス戦で温存されたことを考えると、シャビの先発というのが論理的にも正しい。となると、ラキティッチorイニエスタが外れるのだが、ここは正直なところ全く読めないので、結論は出さないでおく。ここ最近のピケを見ると、こうするのでは?と思う。ただクラシコは別物、経験値もチーム随一なだけに、ピケの出場の可能性は高いだろう。FWでネイマールと組む選手はルイス・スアレスではなく、ペドロになりそうだ。正直この人選に落胆している人も少なくないだろうが、プレッシングの面での連携がまだ十分にはとれてないのだろう。ただ、恐らくペドロは特に何も出来ないだろうから、後半の早めにスアレス投入となるに違いない。
★レアルマドリー
GK:イケル・カシージャス
CB:セルヒオ・ラモス、ぺぺ
RSB:カルバハル(アルベロア)
LSB:マルセロ
CM:クロース、モドリッチ
LM:イスコ
RM:ハメス・ロドリゲス
CF:カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド
RSBにアルベロアorセルヒオ・ラモスを置くことも考えられるが、ここはカルバハルを信頼するのではないだろうか。基本的にはクリスティアーノの位置は流動的で、それに合わせて周りの選手たちが調整する形になりそうだ。ハメス、イスコがクリスティアーノ、ベンゼマと絡む攻撃は破壊的の域を越えている。
《まとめ・予想・展望》
試合までのアプローチの仕方は様々あるにせよ、90分間がスペクタクルなものになることは間違いない。そこでは実力×実力以上の何かが試合を左右し、時により勝利に値する“幸運”を持った者が勝つ。
筆者の個人的なキーマンを述べておこう。バルサはイニエスタ、マドリーはハメス・ロドリゲスだろう。イニエスタが輝いている時はそこにはバルサのイレブンが歓喜の輪を作っているだろうし、その逆ではマドリーのイレブンが作っているに違いない。
この手の試合で試合結果を客観的に予想するのは不可能である。そこには必ず先入観や希望的観測が入り混じってしまう。それを踏まえた上での筆者の予想はバルサの3-1での勝利ということをおまけ程度に添えておこうと思う。
近年のクラシコではあまり引き分けがない。これは偶然なのだろうか?いや、フットボールの神様はこの2つの巨星をぶつからせ、必ず勝敗をつけさせる。そこでは、世界中の人々がどちらかを贔屓目に応援しているはずだ。勝った方は自らのアイデンティティを確信の目で見つめられるようになり、負けた方はその逆になる。“クラシコという名のタイトル”をかけた試合が始まるとき、地球そのものが呼吸するのを止める。2つの巨星がぶつかる瞬間、きっとフットボールの神様もこの読者同様に、今か今かと心待ちにしてるはずだ。
