前回のコロシアムは、メンバーが猛者ばっかりで、それぞれのプレイに耳を傾けるのも、これまた一興です
なかでも管楽器奏者の、ディック・ヘクストール・スミス
今回の主役、ローランド・カーク流の2本同時吹き、なんて書きましたが、どちらが元祖かはわかりません
さて、ローランド・カーク。
昔は、プレイする様子(2本ならず、3本も)また、その風貌が奇怪で、そういった側面ばかりが、クローズ・アップされていた時期もあったみたいですが、いえいえ、彼の音楽を聴いてみてください。
すべての音楽を内包してしまったかのような、めくるめく万華鏡。
そして、哀愁・怒り・ユーモア、さまざまなエッセンスを取り込んでしまった彼のプレイは、一度その世界にはまってしまうと、抜け出せなくなってしまいます
- ヴォランティアード・スレイヴリー/ローランド・カーク
- ¥1,800
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そして、不朽の名作、『ヴォランティアード・スレイヴリー』。
前半スタジオ録音、後半ライヴ・パフォーマンスの同時録音。
全人類に捧げたいアルバムです
1曲目「ヴォランティアード・スレイヴリー」から、祝祭的ムード満点 途中ビートルズの「ヘイ・ジュード」のフレーズも織り交ぜ、いよいよ一大音楽絵巻の始まりです
ゴスペル・ライクなコーラスで始まる②「スピリッツ・アップ・アバヴ」。ブルース・フィーリング豊かな前半から一転、ハンド・クラッピングも交え、まさに教会音楽の世界へ
③「マイ・シェリー・アムール」は、ご存知スティーヴィー・ワンダーの名曲カヴァー 冒頭のホイッスルが愉快 フルートとヴォイスの二段仕込みですよ
小粋でポップなヴォーカル曲、④「サーチ・フォー・ザ・リーズン・ホワイ」で一呼吸つくと、いよいよ本作の白眉、⑤「アイ・セイ・ア・リトル・プレイヤー」へ突入です
バカラック作のこの曲、アレサやディオンヌを凌駕する勢いです 絶妙なスピード感あふれる演奏で、聴くものを圧倒し続けます
嗚呼、何度聴いても、全身の身震いを抑えることが出来ません
⑥のMC以降は、ニューポートでのライヴ録音。
⑦「ワン・トン」がまた強烈 フルート吹きながらのスキャット(ヴォイシング)の嵐
⑧のメンバー紹介に続いては、故ジョン・コルトレーンへ捧ぐメドレー、⑨「ア・トリビュート・トゥ・ジョン・コルトレーン」。「ラッシュ・ライフ」の穏やかでやさしいメロディーから、モンゴ・サンタマリア作の名曲「アフロ・ブルー」へ。最後は「ベッシーズ・ブルース」。心が温まります
間髪入れず、曲はラスト⑩「スリー・フォー・ザ・フェスティヴァル」へなだれ込みます。
ここでもフルート&ヴォイスの超絶パフォーマンス そしてあらゆる楽器を駆使して曲は最上の極みに達します・・・。
カークの音楽をひと言で表すのは、どだいムリな話ですが、自分が感じるキーワードは、「心地よい猥雑さ」です。
彼は、天賦の才能で、それを自身の音楽に昇華させることに成功しています。
個人的主観ですが、ジャズ界の3大巨頭は、マイルス、ミンガス、ローランド・カークだと思ってます。
それでは、カークの名演をどうぞ
余談ですが、彼は全盲の人です。
あえて言うまでもありませんが、そのことが、彼の作品に対する評価を左右する要因となるものではありません。
今後、さらに、彼の遺した功績が称えられることを、望んでやみません。