PSO2の二次創作小説です。
安斉さんのキャラクター(イドラ)をご拝借しました。
多分リレー小説になります!
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Day-2 無邪気と手紙
「いたいた、晄実ー!」
自らが所属するチームのオーダーを終わらせ、何をしようかとロビーをうろついていた晄実に、無邪気な呼び声がかかる。聞きなれた声色に振り返ると、そこには彼が想像した通り小さな隣人、もといサポートパートナーである沙耶が居た。思えば彼女に出した指令の時間はとっくに過ぎている。しかし、ルームに来てほしいという、メールは届いていなかった。不思議に思いながらも晄実は彼女を見る。すると、一通の手紙を抱えている事に気が付いた。だが、アークスとしての性か、いつもと違う行動を取る鞘に、問わずにはいられなかった。
「何だ?報告ならいつも通りメールで」
「今回は別の用だよ!可及的且つ速やかに渡してほしいって言われたんだよねー!はい、これ。今読んで!」
主人の問いを遮る様に返された答えと、差し出された手紙に、彼は嫌な予感がしていた。命がけの仕事をしている以上、こういったものはバカに出来ない。しかし、おつかいを頼まれ、成功させようとしている子供を悲しませることは晄実には出来ず、おそるおそる手紙を受け取り、沙耶に礼を言った。
裏返し、差出人を確認した。
瞬間、沙耶の目に映ったのは、膝から崩れ落ちた主人だった。
「あ、晄実ー?」
「沙耶を使ってまで送ってくるとは…あの野郎…!」
恨みのこもった声に、沙耶は思わずたじろいだ。チラリ差出人を見れば、男性の名前だ。データベースに照合すれば、とある大手企業の重役の名、そして、顔写真から主人の父親であることが判明する。
中を開くよう促し、隣から覗き込めば、社交パーティの招待状だった。日付は、明後日。その下には、「強制参加」という招待としては不釣り合いな文字と、2名以上での参加必須という短い文。
沙耶が首を傾げるのと、まずいなと晄実が呟くのはほぼ同時だった。彼女が疑問を口にすれば、主人は答えた。
「…2名以上での参加ってことは、多分、零弐を連れてこいってことだ。どちらか1人…あわよくば2人とも家に戻そうって魂胆だろ。だけど、キャストである零弐を参加させるわけにはいかねぇし、かといって、親父の顔を立てないわけにもいかない……どうするか…」
晄実がああでもないこうでもないと思案する中、沙耶は小野が主人が本来ならばアークスでなくてもよい人間であること、そしてかなりのお人よしであることを改めて認識した。
ふと、キャンプシップ発着場への入り口から、声が聞こえた。晄実にとっては聞き慣れた、沙耶にとっても憶えのある声に、2人は顔を向ける。思った通り、晄実の動機であるイドラが、現在の相棒とともに任務へ出向くところであった。
「そうだ、あいつだ…!あいつを身代わ…代理に誘う」
彼は指を鳴らし、イドラの方へと向かって行った。
沙耶はそれを見送ると、メールを打ち込む。送信ボタンは、マイルームに戻ってからにしようとテレポーターへと足を向ける。彼女は数十秒前の晄実の顔をこう語る、あんないい笑顔の主人は見たことがなかったと。
「イドラ!」
晄実に声をかけられたイドラは、相棒に先に行って待っててくれと言って、彼に近づいた。
「なんだよ晄実。これから任務なんだけど」
「見りゃ分かるさ、すぐに済む」
「……で?」
「突然だが、明後日暇か?」
「え?あぁ、暇だけど…まさか、飲むのか!?」
急な誘いに、もっともらしい理由―一番あってほしい願望だろうが―を見つけたイドラは、晄実の襟首を掴んで引きあげ、きらきらと輝く目を彼の視界に押し付ける。更に前後に揺すり、なあなあ!と話の続きを促している。人は好物を前にすると、何も見えなくなるようで、イドラは晄実が今どんな顔をしているか気づいていなかった。
2人の身長差は約20センチ近くある。高いほうであるイドラが、低いほうの晄実の襟首を持ち、引きあげたらどうなるか。
「…おい、イドラ」
「なんだよ?」
「降ろせ」
同期生の地を這うような声を聞いてから、イドラは下へと視線を移す。晄実の体は、5センチ程浮いていた。あ、悪いと手を離し、着地し咳込む彼の背中を見ながら、イドラは笑ってしまう。大の男が、足がつかないほどに持ち上げられた事実が、彼の笑いの沸点を超えてしまったようである。だが、笑われたほうはたまったものではない。
「お前…人を持ち上げといて笑うとはな」
「いや、だって、180超えた奴が、ぶふっ!」
「テメェがでかすぎんだよ、ト○ロが!」
大笑いする同期の脛に、晄実は仕返しとばかりに蹴りをいれた。
イドラが鳴りやまないせかしにもう少しと返信し、晄実に続きを促すが、彼は首を振る。
「任務だろ。詳しいことは夜に連絡するから、取り敢えず、お前は明後日予定空けとけ」
いいな!との念押しに、イドラは元気よくうなずき、キャンプシップへと走って行った。晄実は、丁度よくきたメールを確認しながら、マイルームへと向かった。
続きは安斉氏のサイトで!