1年前の今日もユンギの記事を書いている。

私はずっとユンギが好きだ。

いや、あの時よりもずっと今の方がユンギのことを想っている。（気持ち悪いことを冒頭から書いてごめんなさい）

BTSはどのメンバーも目が離せないのだけれど、ユンギはちょっと特別で。

コロナパンデミックに翻弄されたこの2年。

世界中が暗澹とした雰囲気に呑まれ、彼らだけでなくみんながそうだったけれど、とりわけステージ中心だった活動の場所を完全に奪われたわけで。

メンバーはそれぞれに苦悩し、その苦悩の果てにそれぞれの着地点というか収まりどころを見出したように見えた。

その着地点はどちらかといえば諦めのような、前向きというよりはただただ今を受け入れたというか。

そんな中で、ユンギはちょっと違う境地に行ったような気がして。

私だけじゃなく多くの人が、BTSの着陸について思いを馳せることがあると思う。

間近に迫る兵役。

そして2度目の契約期限。

HYBEにとって彼らは稼ぎ頭であり株主であり、企業としての中枢を担っていると思う。

そうでなくても彼らの会社への信頼は太いもののように思えるし、だから他のグループよりも再契約の可能性は高いような気もする。

でもそれぞれがアーティストとして成熟し、個人として好みの方向性が出てきたり、それなりの欲も出てくるだろうし、今までのような身も心も捧げるようなパフォーマンスは年齢的にも体力的にも厳しくなってくるだろうことも踏まえると、グループでいることの意味が薄くなっていくのは想像が出来る。

会社と個人、それぞれが思うところがあるだろうし、簡単に答えが出ることではないからきっと決定していることはそう多くはないだろうと思う。

そうじゃなくても来月のコンサートすら開催の保証がない現状で、そのもっと先の未来のことを口にするのは勇気がいることだろうと思う。

気になる。

でも知る術もないし、きっとメンバーだって口にするわけがない。

と思っていた。

GQとVOGUEがBTSの特集を組んだ。

メンバーそれぞれのロングインタビュー。

とても興味深く読んだ中で、私が驚いたのはユンギが

「死ぬまでBTSでいるだろう」

と答えたことだ。

ユンギからこんな言葉が出るとは。

いやもしかしたらこれは概念的なものかもしれない。

個人で仕事をするようになっても、自分のベースはBTSだと言いたいだけかもしれない。

そうかもしれないけれど、「墜落は怖いけど着陸は怖くない」などと言って、多くのファンを着陸という名の幕引きへの想像の沼に落としておいて、「死ぬまでBTS」だなんて。

あなたはどれだけ我々ファンの心を弄ぶのか。と思ってしまったが、その言葉を発するに至った心境の変化をこのVOGUEのインタビューの中からも拾うことが出来る。

彼らには私生活というものがほとんどないと思う。

仕事と生活の線引きが曖昧な生活を送る彼ら。

一年のほとんどを仕事に費やしてきたであろう彼らは、私のような定期的なお休みのあるサラリーマンよりもずっと奪われたものは大きいと思う。

コロナで全てを奪われたと言っても過言ではない彼らにとって、この2年間の空白とはどんな意味を持ったのだろう。

誰でもきっと虚無感を感じ、華やかなスポットライトを浴びていない自分に価値があるのだろうかと自問自答し、辛い日々を送ったことは容易に想像できたし、のちに彼らの口から聞くことが出来た。

そしてどうにか置かれた状況を飲み込み、そこから這い上がるきっかけを掴んだだろうと思うし、7人いれば当然7人それぞれにその抜け出し方があっただろうと思うけれど、私はジョングクとユンギは割と早くそこから脱していたのではないかと思っている。

ジョングクのことは過去記事でも触れているし、今日はユンギのセンイルなのでユンギのことだけ話したいと思う。

デビューからどのメンバーも変わったと思う。

みな成長し、大人になって、ビジュアルも変わり、考え方も変わったと思う。

その中で最も考え方が変わったのはユンギではないか。

インタビューにも出てくるが、かつてのユンギは「怒り」と「劣等感」だったと思う。

いや、「劣等感」からくる「怒り」のような。

それが彼をヒップホップへと向かわせた原動力とも言えるのだろうと思うし、それがなかったら今のミンユンギはなかったのではないかと思う。

インタビューの中でユンギが自ら「最も愛している曲」としてD-2に収録された「사람 people」の話をしている。

この曲については私も過去記事

『【ARMY Playlist】ユンギからのメッセージ』アミへのセンイルプレゼントとして、ARMY Playlistを用意してくれましたね。何しろこの日とPermission to Danceの発表が同じ日だったの…

ameblo.jp

で紹介している。

この時にもユンギがチョイスしているのだから相当に思い入れのある曲なのだろうと思う。

ユンギ自身も「こんな曲が作れるようになったんだ」と感慨深いこの曲を私が思う時、1本目のミクテ「Agust D」の収録曲「The Last」が思い浮かぶ。

音楽について専門的に語れるほど詳しくないけれど、最初のAgustDとしてのミクテは聞いていると苦しくなるようなユンギの叫びのように聞こえる。

特に「The Last」の衝撃は今でも鳥肌が立つ。

楽曲に全てを載せてはいないのかもしれないし、全部が真実かどうかはわからないけれど、この「The Last」はこれまでのユンギの人生と苦悩と葛藤とそれに対する答えをダイレクトにぶつけた曲のように感じる。

ユンギが立ち向かっていた病や両親との関係性、自分自身を何度も殺したであろうその痛み。

そして成功する前も成功してからも苦しみは続いていたこと。

成功すれば全てが解決し、手に入ると思っていたものは、すればするほど大きくなっていくモンスターのようなものだったこと。

とても気楽には受け止め切れないユンギの心の叫びがほとんどテクニックを使わずに表現されていると思う。

そんなユンギが「変わってきたのは2018年くらいから」と答えていて、「怒りをエネルギーに進むことができなくなった」とも言っている。

（この「사람 people」が出来上がったのは2016年だということに驚いたが）

ユンギの中で1本目のミクテで吐き出したことは心の整理をつける意味で有効だったのだろうと思うし、そこからのユンギの音楽性の広がり方は2本目のD-2を聞いても素人の私でも伝わるものがある。

「The Last」と「사람 people」

とても同じ人が書いた曲とは思えない。

この心境の変化がユンギにとって大きかったのだろうと思う。

そして迎えたパンデミック。

「사람 people」の中で印象的なフレーズ

「君の平凡はむしろ俺の特別だ」

ユンギがこのパンデミックで全てを奪われた生活の中で得たものはその「他人の平凡」だったのではないか、と思う。

自分のお気に入りのベッドで太陽が上がったら目を覚まし、コーヒーを飲み、仕事をし、お腹が空いたらご飯を食べ、暗くなって眠たくなったら眠る。

マネージャーにスケジュール管理をされずに自分で決める。

そんな生活が彼らにとっては特別であったわけで、その特別が続きすぎたために不安になった人もいただろうけれど、ユンギはそれを楽しんだのではないだろうか。

あんなに苦しみながらも求めていたものは富でも名声でもなく小さな幸せであり、その幸せは身近なところにいつも転がっていたのだということ。

自分を蹴落とそうとしていた敵たちも、自分が作り出していた幻想のようなものであったことに気がついたのではないかと思う。

インタビューの端々にそれが出ている。

2016年に出来たと言った「사람 people」で得たのは悟りともいうべき境地だけれど、実際には彼らの活躍は目まぐるしく、日付変更線を飛び越えてばかりの生活をしていると体感する機会はほとんどなかったと思う。

それがこの2年の空白で時間が出来てやっと実感できたのではないだろうか。

そしてその時、その後の大成功を得てもあの時得た境地は変わらなかった自分を確認して、ほっとしたのではないかと思う。

ユンギがここ数年、どんどん大きくなるBTSというモンスターを怖がることなく乗りこなしているように見えるのは、物質的なものが必ずしも大きな満足を与えてはくれないということをわかったからだろうし、大きな夢を持つことは必ずしも必要ではなく、成功が必ず幸せに直結するわけじゃないってことを実感したからだろうと思う。

インタビューを通して感じるのは「頑張りすぎないように努力している」感じ。

音楽にしても仕事にしても何に対しても。

「愛しすぎるとしんどくなる」

これは私たちも強烈に共感する言葉だと思う。

どんなに愛していても適度な距離感を持っていないと自分が辛くなり、それを続けることが困難になってしまう。

夢なら見過ぎないように。

愛なら与えすぎないように。

ってとこだろうか。

この適度な距離感は、ひいては自分自身との距離感でもあると思う。

自分自身の過去の言葉に縛られないように。

自分自身の言動に縛られないように。

自分自身の目に縛られないように。

人は変わっていく。

このことを1番体現して、だからそれを1番許容しているのはユンギだと思う。

「死ぬまでBTSでいるだろう」

なんてことを口に出来たのは、これが理由だと思う。

今のユンギがそう思っているだけで、半年後のユンギが同じ気持ちかどうかわからない。

でも、今そう思うんだからそれでいい。

ってことなんだろうと私は思っている。

私はユンギが大好きだ。

ユンギが抱えていた苦しみを理解することはきっと出来ない。

その苦しみを手放すための一助になれたかどうかもわからない。

もしかしたら苦しみを与える側になっていたかもしれない。

でも乗り越えて今、私たちにその姿を見せてくれて本当にありがとう、と思う。

「心配しないで気楽な人になることが夢」というユンギ。

ジンのような人になりたいと言っていたのはこのことと同じなんだろうと思う。

最近はその夢に近づいてきているように思えて、本当に良かったなぁ、と思う。

アイドルになんてなりたくなかったであろうユンギ。

誰かに助けてもらったり、弱いところを見せたりすることは出来なかったであろうユンギ。

自分は誰からも理解なんてされないと思い込んで、世間や大人や周りを敵視していたであろうユンギ。

そんなユンギが、

「僕が間違っても僕を受け入れてくれるってことがわかった」と言い「自分が出来なかったら誰かがそれを埋めてくれる」「僕らはチームだから」と恥ずかしげもなく口にする。

その延長線上に「死ぬまでBTS」があると思うと胸がいっぱいになる。

変化を恐れないユンギだから「今」だけかもしれない。

だから私も同じように「今は」その言葉を信じる。

また変化した時そのことを伝えてくれるだろうと思うから、その時まではお守りのようにこの言葉を大切にしたい。

私だって今は思うよ、「死ぬまでアミ」だって。

ユンギ、お誕生日おめでとう。

あなたが手に入れた日常が、穏やかで何にも囚われない気楽なものでありますように。

ユンギのお誕生日に寄せて