こちらは映画【ナイトフラワー】のレビューとなります。

以下はネタバレを含むため閲覧注意です。

 

 

 

 

 

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本作を観ようと思ったきっかけは、ロックバンドである「SUPER BEAVER」のボーカルである渋谷龍太さんが映画デビューを果たしたと知ったことでした。

音楽シーンで強い存在感を放つ彼が、スクリーンでどのような表現を見せるのかという興味から鑑賞を始めました。

 

しかし、作品が進むにつれてその軽い動機はすぐに打ち消されました。物語の中心にある、シングルマザーが「子供のため」に人道から外れた選択を重ねていくという、非常に重くダークなテーマ。その過程があまりにも生々しく描かれており、観ている側も徐々に倫理観を揺さぶられ、気づけば作品の持つ陰鬱な空気に完全に飲み込まれていました。

 

中でも圧巻だったのは助演女優の演技。日本アカデミー賞で助演女優賞を受賞したのも納得の名演で、役に対する深い理解と作り込みが感じられました。表情や間の取り方一つひとつに説得力があり、「この人物は本当に存在しているのではないか(演技ではなく素の姿ではないのか)」と思わせるほどのリアリティがありました。相当な時間をかけて役作りを行ったことが伝わってきます。

 

さらに、ネット上でも本作は多くの称賛を集めており、特に「現実にあり得てしまいそうな怖さ」や「善悪では割り切れない人間の弱さの描写」が高く評価されています。単なる“可哀想な母親”として描くのではなく、観る側に「この状況なら自分はどうするのか」と問いを突きつけてくる点が、多くの視聴者の心に刺さっているようです。また、過度な説明を避けた演出や余白のあるストーリーテリングも「考察したくなる映画」として好評で、ラストに至るまでの積み重ねが非常に巧みだという声が目立ちます。

 

特に印象的だったのがラストシーンです。夜にしか咲かない花(おそらく月下美人)が昼間に咲いている描写が登場しますが、その状況は矛盾しており、物語の結末について明確な答えを提示しない演出になっています。この“語らないことで語る”表現には正直驚かされ、観終わった後も解釈を巡って余韻が長く残ります。このラストについても「観る人によって結末が変わる」「あえて救いとも絶望とも取れる余地を残している」といった形で高く評価されてると思われます。

 

本作は、人道から外れた行為を描いている以上、いわゆる大団円で締めくくることはできません。しかし同時に、子供に対して直接的で残酷な描写を避ける必要があった。その結果として、このような象徴的かつ曖昧なラストに落とし込まれたのではないかと感じました。

 

重たいテーマではありますが、だからこそ観る価値のある作品です。現在はサブスクでも鑑賞可能なので、少しでも気になった方にはぜひ一度観てほしい一本です。