ちょっと訳の分からない書名に惹かれて購入しました。
一言でいうと戦後日本の思想の流れをジブリの軌跡を題材として開陳した書籍といえます。戦後の日本そして世界の思想の流れは渡邊氏によると、『戦後80年間を、前半の40年間と後半の40年間に大きく分け、それを「大きな物語」の完成とその解体・変容のプロセス』と捉えられています。
ジブリを作り上げた宮崎駿や高畑勲の作品には「大きな物語」が窺がわれ、次世代の宮崎吾郎や米林宏昌には「その解体・変容のプロセス」が垣間見られます。ここでいう「大きな物語」とは「国家や社会の成員が共通前提とするイデオロギーや規範」のことで、具体的にはマルクス主義であり、民主主義などのことです。宗教的にはカトリックであったり、イスラムであったりします。対して解体と変容というのは、全てが個人に還元されるようになりその重さに人々が喘いでいるような時代になっているように思います。その中で宮崎吾郎や米林宏昌は新しい価値を求めて呻吟しているように思います。
宮崎駿の作品がマルクス主義や民主主義を代弁しているというのではなく、それを前提として、あなたはどう考えますかという問題提起の形をとっているので、いつまでも考えさせられる作品であると思います。対して宮崎吾郎や米林宏昌は問題提起すべき「大きな物語」がないので、個人の想いに焦点が当てられることが多いように感じます。
「ジブリの戦後-国民的スタジオの軌跡と想像力-」渡邊大輔著 中央公論新社 2025年5月25日
