病気について
病気について何か言われるのにうんざりしたので、ここに書いておきます。私の病気は、人から人に感染するものではありません。そうした偏見に晒されて、私たちは苦しんでいます。伏相病(ふくそびょう)という名前のもので、遺伝が原因のひとつらしいです。発症すると膵臓と肝臓の機能に異常をきたします。「同性愛者に多い」というのは誤った情報で、普通の人より頻繁に検査を受ける人が多いので、早期発見される確率が高いだけです。必ず発症するわけではなく、確率的には「三代にひとり発症する」なんて説明されましたが、「じゃあなんで私だったの?」としか思えませんでした。少し前に薬が開発されたので、病気が進行する前に薬を飲み始めれば、少なくとも、死ぬようなことはなくなりました。だから私は、本当に運がよかったのだと思います。私の知っている人も、「あと五年早ければ、助かったかもしれない」と言っていました。せめてお見舞いに行きたいといっても、「痩せてぼろぼろになった姿を見せたくない」といって、病院の場所を教えてくれません。『天罰』だなんて、ひどい言葉を投げつける人に、わかってほしいとも思いませんが、私たちは、何も悪いことをしていません。