「…ほぼ毎週末さ、うちに来てるけど、それってどうなの?」


翔くんが呆れたような声を出す。


「いいんだよ。
翔くん分かってると思うけど、うちの経済学部って、2年生までは横浜キャンパスじゃん?
だから週末は横浜で遊んでそのままニノの家に泊まるってことにしたの。
ニノの理工学部はずっと横浜キャンパスだし、理系だからきっと院にも行くし、実験とかでも遅くなるから、自宅から何年も横浜通うの面倒とか言って、ニノは大学のそばで1人暮らし始めたから…。
うちの両親、ニノのこと知ってるし、週末はこれからいつもニノん家泊まるって一応伝えたけど、『ふーん』しか言わないよ。
そもそも大学生の息子にそんなうるさいこといちいち言わないよ」


「ニノ…
あいつか…」


翔くんが複雑な顔をした。


「むふ♡
大学もニノと一緒で心配?
でも大丈夫だよーぅ♡
浮気なんてしないから♡」


「は?
浮気なんてしたらその瞬間にもう終わりだから。
秒で別れる」


「…ひどいっ!
別れるとか簡単に言わないでよ!
言霊って知らないのっ?」


俺は真剣に涙ぐむ。


「そんなこと言ったら、『浮気』だって言霊になるんじゃないの?」


「…ならないもんっ!
『浮気』じゃなくて、『浮気なんてしない』って言ったんだよっ!
変なところで区切らないでっ!!」


ぎゃーぎゃーと俺は翔くんに抗議した。


そんな俺を無視して翔くんは冷蔵庫から缶ビールを出す。


「あ、俺の分もちょーだい♪」


「…はぁ?
潤は18歳だろ?
まだ飲めないだろーが」


「18歳は成人だよ?」


「アルコールとタバコは20歳からのままだろ」


「何だ翔くん覚えてたか」


「忘れるわけないだろ。
ったく。油断も隙もない」


翔くんは自分ひとりだけごくごくと美味しそうにビールを飲む。


むー。
ズルい。
ちょっとくらいいいじゃん…。。(←ダメです)


俺が唇を尖らせてると、


「ほら、これでも飲んでれば」


と言って、翔くんが渡してきたのはノンアルコールビール。


「…それ飲んだら寝るぞ。
早く来い」


「寝るって、言葉通りの意味じゃないよね?」


「さぁね?
早く飲んでベッドに来ないと本当に寝てるかもね?」


そう言って翔くんはさっさとベッドルームに行ってしまう。


「…ちょっ…!
待ってよ!
もうこれいらないっ!」


俺は渡されたノンアルコールビールは開封せず冷蔵庫に再び入れて、慌てて翔くんの後を追った。