<彼女・2>
本をくれた彼女は雪美という・・・。
まだ僕が結婚する前・・・学生だった頃、共通の友人がきっかけで知り合った。
その友人がいなかったら僕らは出会うことはなかっただろう。
今でも思い出せるのは、雪美を紹介された時に彼女が見せた笑顔だ。
はにかみながら初々しさを忘れていない女性の微笑を、僕はその時まで見たことはなかった。
初めて女を見て可愛いと思った。
それからの付き合いだから、もう10年は過ぎている。
付き合いといっても、今は・・・・友人の枠を超えてはいない。
彼女の話を聞き、彼女の悩みに応えていく・・・。
兄のような、道しるべのような・・・
一番近いようでいて遠い・・・本当なら近い場所で笑い合えたはずだったのに、
タイミングが合わず彼女を傷つけてしまったかもしれない・・・。
その見えない傷が、実は今でも僕を蝕んでいて、あれから誰といても雪美を想うようになり、
最終的には雪美の笑顔に勝るものはないのだと感じてしまうのだ。
思い出の中の雪美だけが色づいていて、
目の前に笑っている女の方が墨絵のようにくすんでいる・・・そんな可笑しな状況。
好きだと感じた瞬間に想いを伝えあっていたら・・・
こんな迷路のような恋に身悶えることもなかったことだろう。
ましてや・・・他の女を雪美の代わりにしてしまおうとは考えもしなかったことだろう・・・。
(彼女・3につづく)