<~Sorciere~18 透水



そして僕は電車に揺られているのだ・・・・・



長い線路を電車は、ただ彼女へと向かっているかのように突き進んでいる。



過ぎ去った風景が過去へと遠ざかっていく中、僕は今までのことを思い返していた。



彼女に逢うためにこの電車に乗り、逢えることに喜びを感じ、



ただ、刹那な時間の中に本当の愛があるのだと錯覚し・・・・



彼女とこのままこうしていられるのであれば、それでもいいかと思ったりもしていた。



それがいつの日からか、一緒に生きていきたいと強く思うようになったのだ。



それが叶うかどうか・・・僕はあの男に賭けなければならない。



あの男は・・・美智子は結婚してないという。



そんな莫迦なと思ったけれど、もし本当にそうならどんなにいいか・・・



僕に嘘をついたのが何故なのかわからないけれど、



嘘であってほしいと強く願っている・・・



あの電話を切り、すぐに用意をして街を出たのが18時を過ぎていた。



向こうに着くのは20時を回るだろう。



電車の中からいつものホテルへと電話をかけて、今夜の宿を確保した。



彼女の街に着いてあの男と逢っていると、もう今日中にはこっちには帰ってこれないからだ。



いつもはしない仮病で、明日は仕事を休まなければならないだろう。



でも、それでもいいのだ・・・



これで、この苦しみから解放されるのであれば・・・



確かに、彼女が結婚していないとするならば・・・僕と一緒になってくれるという望みはでてくる。



だが・・・だからといって彼女に他の男がいないとも限らない。



僕で満足しているのであれば、あんな嘘はつかなくていいのだけれど



それをしているということは、その可能性も捨てきれないということだ。



覚悟しなければならないのだろう。



今夜で彼女と別れなければならなくなるかもしれない。



あの甘い微笑みも、芳(かぐわ)しい髪も・・・僕のものだと思っていた彼女のすべてを・・・



こぼれだした砂を拾い集めて・・・彼女を作り上げてうまくいくかわからないけれど



僕はもう後には戻れないのだ・・・・



溢れでた涙で彼女を繋ぎとめることができないこともわかっている。



彼女の心に響かない涙など、蛇口からでた水と同じような価値しかないのかもしれないということも・・・



僕は思わず何も見えない外を見てしまい、



いつまでも続いて行きそうな線路に、思わず途方に暮れてしまっていた。