<~Sorciere~9 黄炎>


彼女と別れてください・・・


彼女に用事だというのは、同窓会なんかじゃないんです・・・


何から切り出そうかと悩み、それでも言いたいことは言わなければ・・・


そう思い僕が口を開いた時・・・


旦那の方が先に僕へと決戦の火蓋を切ったのだった。


「君が・・・美智子の男なのか・・・」


全身の血が逆流したかと思った・・・


こんなに早く全てがわかってしまって、


しかも言い当てられてしまうとは思いもしなかったから・・・


この旦那の口ぶりからすると、どうやら何事かがあってバレてしまったのだろう。


でも、どうして?なぜバレた?


気をつけていたつもりだった。


彼女への電話も、メールも・・・彼女がいいという時間まではせずに我慢もした。


彼女自身も気をつけていたに違いないのだ。


他人の目を気にしていたのは僕ではなく彼女だっのだし、


二人で逢う日も綿密に練られたアリバイを元に行われていたのだから。


なのに、なぜ・・・バレた?


伏し目がちにした彼女の悲しそうな顔が一瞬、頭をよぎる・・・


ここでこうして旦那と対峙していていいのか・・・?


旦那にバレてしまった彼女の身に何かあったのではないのか?


酷くなじられ、心が折れてしまったのではないか?


いろんなことが頭の中に流し込まれた感覚に陥り、


僕は数秒黙ったままだった・・・


受話器の向こう側で旦那の苛々した声が聞こえた・・・


「もう一度聞く・・・君なんだろう?美智子の男は・・・」


「・・・・・・・・はい・・・・」


認めてはいけなかったのは判っている。


でもこれ以上、耐えられなかったのだ・・・


ホテルの一室で彼女の背中を見送るのは・・・


寂しそうに出ていく彼女の背中を引き戻して何度、狂おしく抱きしめたかしれない。


悲しそうな顔をした彼女の顔を見るのはもう耐えられなかった。


あんなに辛い顔をするのは・・・彼女も僕に堕ちていっている証拠なのだから。


だから、僕よりも旦那を愛していることなどありえない。


そう思って、僕はあの数日前の金色の雷を轟かすために口を開いたのだった。