<恋語り・13 ~密愛~>


あの人が私の前からいなくなって、父親でなくなって、どれぐらい過ぎたでしょうか・・・


月日がたつのが早すぎて、


あまりにも突然にやってきた別離に、頭が反応しきれなくて


心を無くしてしまったように思います。


それでも望んでいるのは、また二人で生きていくことができたらそれでいい。


それだけです。


別に他の人なんて欲しくないんです。


あの人さえ私の所に帰ってきてくれたらそれでいいんです。


おかしいですか?


親娘なのに、恋心を抱くのなんておかしいですか?


でも、血も何も繋がっていません。


今までも同じように過ごしていけたらそれだけで良かったのに・・・・


体に触れもらいたいとか、そんな大それたこと望んでません。


それなのに、好きでいることも許されませんか?


母のことを好きだった人なのに、望んでも自分のものにならないことぐらいわかっていました。


でも、それでも・・・私があの人を好きな気持ちは誰にも止められない。


今もまだ、あの人は私の中にいるんです。


一度棲みついた恋心は簡単にでていくことができない。


しかも、終わりを見つけられないのだから、いつまでも私はあの人を忘れられない。


あの人が、ひょっこり帰ってきても


何も言わずに・・・涙だけを浮かべてしまいそうです・・・・


もう二度と会えないかもしれません・・・・


あの人は覚悟してでていったのかもしれません。


でも・・・なぜでしょう・・・・


私は何も望まないと言ったのに、どうしてそのまま一緒に過ごしていけなかったんでしょうか?


ただ、一緒に疑似親娘を演じて生きていくだけだったのに


どうして、それさえもできずにでていったんでしょうか・・・


できない何かがあったから・・・?


親娘として生きていくには何か支障があったから?


私が思い描いているものとは違うかもしれない。


でもあの人も同じ思いだったとしたら、出て行った理由もわかるんです・・・


望んではいけないものを望んでしまいそうになったあの人が


自分の思いを断ち切るために私の前から去っていったのだとしたら・・・・


私はこのままあの人を待ってしまいそうです・・・


たとえ、それでずっと独りだったとしても・・・・


自分で望んだ恋の最後が、何も実りがなかったとしても私は後悔したりしない・・・・


きっと、ずっとここで・・・


あの人がもういいだろうと思う時まで、ここで待とうと思います。


それでまた親娘に戻っても・・・・


私はそれでいいんです。


あの人が私の傍で生きていてさえすれば・・・それでいいんです。