<恋語り・3 ~後悔~>
「彼女への気持ちを否定しても、やはり俺の心は俺を裏切って、どうしても彼女を欲してしまう・・・。
どれだけ望んでも、好きだと叫んでも俺のものにはならない、彼女を望んでしまう。
ヤツと彼女が結婚したのは早くてね・・・若い二人なのに・・・うまいことやっていて・・・
本当ならもう家に行くのも辛かった筈なのに・・・ただ、彼女の笑顔が見たくて・・・
ただ、彼女が幸せでいてくれることが唯一の俺の幸せで・・・
本当は俺が幸せにしたかったんだって!葛藤しつつ・・・
でも二人と連絡を取り合わなくなるのが怖くて・・・・
二人の中では、もう俺という存在はいらなかったかもしれないのに・・・
いつまでも繋がっていたくて・・・ついつい家に遊びに行ったりしていた・・・」
そこまでを話して、何かが脳裏に浮かんだのだろうか、
あなたは一瞬、眉間に皺を作り再び私を見つめると
その瞳が潤んだように見えた・・・・
何を思い出したのか・・・
思い人の笑顔だったのか・・・それとも・・・
私が思ったことを口にすることはなく、あなたの話は続いていく。
「俺にもうちょっと勇気があったら・・・あの時俺が一人で店に行っていたら・・・
何度も後悔はしたけれど・・・たとえ、そうだったとしても、彼女が選んだのは俺じゃないと思うし、俺と一緒になっていたとしても、同じような笑顔を彼女が持てていたかと聞かれたら・・・即答できないだろう。
だが、ヤツは違う。自分の行く道に自信を持っている男だったから・・・俺と同じような後悔を抱いたとしても・・・すぐにそれを実行に移していただろう。
彼女の笑顔も守れたはずだ・・・
だから、二人は一緒になることができたのだし、できなかった俺が一人だったんだ」
「・・・・・・・・」
そんな・・・そこまでわかっていてもあなたは今でも彼女を忘れることができないというの・・・
私の知らないあなたを知るたびに、聞くたびに・・・
私の心の中に次第に雨雲が忍び寄ってきていた。
でも、それを悟られてはいけない。
その微妙な心の変化を悟られては、彼の過去を聞くことは
永久にできなくなるのだから・・・・