<3つの嘘>
たぶん、僕はきっと今でも君のことが忘れられないんだ
こうやって書いてしまえば楽だったのに、
いつまでも書かないでいたから
本当の心を、自分でも見失ってしまっていたんだ・・・
本当の自分はどこにいたいのか・・・
僕の心は誰を望み、誰のことを一番、必要としているのか
そんな簡単なことも書かなければ思い出せないほど
僕は日々の生活に君を思い出さないようにしてしまっていた。
まるで、思い出すこと自体が罪なことのように
心に鍵をかけて開かないようにしてしまったのかもしれない。
確実に人は年をとっていくというのに、
その時間がどんなに貴重なものだということを・・・
何一つ見ようともしないで、
自分の命が短いと告げられた時に、
真実に気づいてしまうなんて
なんて馬鹿げているんだろう・・・
本当は思い出さなかったという時点で、
君を切り捨てていたというのにね。
余命を言い渡された瞬間に、一番に君を思い出したのはなぜなのか
たぶん、きっとそれは・・・
君との日々が今の僕にとって一番愛おしいものだからだと思う
あんなに愛した人はいない・・・
そう思えた人だった・・・
でも、きみと一緒にならなかったのは、
お互いに違う相手が既にいたからかもしれない・・・
君の家庭も崩したくはない、自分自身の城も崩したくはない・・・
お互いが本気になることは許されない・・・
でも、一番傍にいてほしい、一番理解してほしいのは君だった
そんなことを口にできるわけがなく、
鍵をかけた・・・・
僕は僕自身に嘘をつき、きっと墓場までこの嘘をつれていく
妻に吐いた嘘と、君に吐いた嘘と、そして自分に吐いた嘘
3つの嘘は何を守りたくて吐いた嘘だったのか
永遠に君に会うことはなくても・・・
君がどこかで幸せに暮らしているのなら、それでいい・・・
それさえも嘘なのに・・・
本当はすべてを捨て去って君をこの手で幸せにしたいと思っているのに、
今の僕にはそれも許されない・・・・
ただ、今は記憶の中にいる君と永遠に誰にもみつからない場所で
いつまでも一緒にいられるのだから・・・・
もう、逢えない・・・そう苦しむこともない世界へ・・・
嘘を連れて・・・見破られない世界へ・・・
いつまでも・・・いつまでも・・・