嘔吐した翌日、若干おりもののようなものがパッドにつくことはあったがおしっこは出なくなった。

「おしっこが出なくなったら3日」という情報を信じ、あと2日程度でお別れかなと思っていた。

 

夜、21時頃突然母の呼吸が早くなる。

お風呂からあがったばかりの父と一緒に見守る。

「訪看さん呼ぼうか」と私が言うと妹に「呼んでどうするの?なにもしてもらえないよ」と言われる。

そうだった。治療はなにもしないと決めている。

もう、見守るしかできないのだ。

 

全力疾走しているような呼吸状態が続いている。

22時30分ごろ、なにかあったら呼ぶからと父には寝てもらうことにした。

23時、母の手を握っていた妹が何かを感じたのか母に「お父さん呼ぶ?」と聞く。

すると母が妹の手を握り返した。

さっき寝たばかりの父を「お母さんが呼んでるよ」と起こしに行く。

起きてきた父が「◯◯子(母の名前)」と母によびかけると母の顔がすこしホッとしたように見えた。

 

23時半、散々調べてきた「終末期」の症状として必ず出てきていた「下顎呼吸」がはじまった。

少しでも安心して欲しくて母の骨だけになってしまった胸元をさすり続ける。

ずっとテレビをつけていたはずだが、母の「ハッフー」「ハッフー」という呼吸音だけしか聞こえない。

不思議と苦しそうな顔はしていない。どちらかというと穏やかに見える。

 

0時20分ごろ、母はずっとつぶっていた目を突然大きく見開いた。

「お母さん!」と呼ぶが視線は動かない。

数秒間天井を見つめてまたゆっくりと目をつぶった。

その数分後、呼吸がゆっくりになりはじめ、一度長く息を吐いたあと数秒息が止まる。

ああ、ついにきた。と思う。

「お母さん!」と呼ぶと「ヒューーッ」と音をたてて再度呼吸が始まった。

数回呼吸を続け、また息が止まる。今度は長い。

父が母の顔を見ながら「逝ったかな」と声を出す。

するとまた「ヒューーッ」と呼吸がはじまった。

そして2回ゆっくり呼吸をし、また止まる。

 

今度は何度呼びかけても、もう呼吸が戻ってくることはなかった。

2024年3月3日0時30分。

 

【父のメモ】

03/02

02時ウンチあり、SMおしめ交換。

07時半おしっこ無し。

10時半おしっこ少々Sおしめ交換。

15時半寝ている、軽い鼾。

17時寝ている。

18時おしっこしてない、うんちのような変色あり。

20時ほんの少し変色Sおしめ交換。85%、85。

22時呼吸早い。皆が起きて様子看る。酸素濃度測れない。

23時呼吸早い。様子変わらず。

03/03

00時30分息引き取る。