この連休はオーダー品とリクエスト品の作業にかかりっ切りでしたが、その中から今日は、FIRST ACTのような大がかりなカスタムではなく、アレンジ程度のちょいカスタムを数回に分けて記事にしようと思います(そもそもそういう趣旨で始めたブログだったのを今更思い出しました)。

FENDERジャパンブランドが2015年に終了し、新しい体制の下でJapan Exclusiveシリーズとして国産FENDERが提供されるようになりました。製造自体はこれまで通りダイナ楽器が請け負っているようですが…問題はその価格で、フェンジャパ時代のように幅広い価格帯はなく、仕様違いでも基本的に10万円前後もするものになっています。そうなると庶民はFENDERロゴを諦めてSQUIERあたりに落ちつくことになる訳で、人気のヴィンテージレプリカが欲しければ、自分でアレンジすることになります。…という訳で、今回はSQUIER製通常ラインの安物テレキャスターを50年代風のモデルにアレンジしてみます

まずは古いテレキャスターと近年物とはどこが異なっているのか知る必要がありますが、それは各種テレキャス本で学んでいただくことにして。あまりにこだわって細かく追求すると当然コスト高を招くことになりますし、限界はあるので妥協も必要になるでしょう

今回は是非とも押さえておきたいポイントを最初に個条書きにし、それを1つ１つクリアする過程を取りあげていきます。

①50年代初期は全てアッシュ材で木目が透けるブロンドフィニッシュだったのですが、現在は廉価モデルにアッシュ材が使われることはないので、木目が強く出ている材の物をベースに使います。

②ネックは当然メイプル指板(ワンピースは諦める)のつば無し21フレット(※12日編集：ベースと勘違いして最初20フレットと書いていました)。ストリングガイドは丸ボタン型に変更。

③ピックガードは黒の1プライ5点止めに変更。

④コントロールノブはドームノブで、スイッチノブは丸型に変更。

⑤ブリッジはオールドスタイルの3ウェイに変更。

⑥アウトプットジャックをカップ型に変更。

⑦塗装はオールラッカーリフィニッシュ(今回はナチュラル)。

予算が充分にあれば他にも変更したい点はあります。SQUIERはロトマチックペグなので、これをクルーソンタイプに変更したいですが、それにはペグ穴の径を調整するためのコンバージョンブッシュも同時に必要になります。これとブリッジの3ウェイ化は、機能の面から言えばグレードダウンです。それと50年代でも極初期のブロードキャスター仕様にしたいのであれば、ネジ類を全てマイナスネジにするのもいいでしょう。私はプロトタイプTEを製作するときにはそうしています。マイナスネジは力点が半減する上に、その分余計に力を加えるとドライバーヘッドがネジから外れて作業効率悪いことこの上ないのですが、マニアはとにかく古い仕様を喜びます

前おきが長くなりましたが、まず最初に①ベースモデルの選定です。私はたまたま在庫していた90年代メイプルネックのキャンディーアップルレッドの塗装を剥がしてみたら、結構木目の強く出た3ピースアルダーだったのでこれをそのまま使います。メタリックカラーの下がこれはラッキーの部類で、2000年代になると塗り潰しのSQUIERは途端に材の質が低下します

次に一番大変な⑤を片付けておきます。この作業だけはポン付けという訳にはいかず、初心者にはハードルが高いです

元の6ウェイとoldスタイルの3ウェイとを比べてみると、一見して6ウェイの方の全長が長いことが分かります。実は長さだけではなく、幅も4mmほど大きいです。それは3ウェイがPUホールの端からすぐにプレートが立ち上がっていることからも分かります。この立ち上がりが無い分、6ウェイは幅広になっている訳です。

また、oldスタイルの3ウェイはオクターブの調整範囲が狭く、オリジナルはかなりネジを締めた位置になるのが普通ですが、6ウェイはその点を改善するためかブリッジエンドが後方に伸ばされています。またこの処置は、6ウェイのバックローディング用の穴が、縦長になったサドルの真下にくる事とも関係があります

この2点の設計変更は、リアピックアップとサドルの位置関係にも影響を及ぼしており、ブリッジを換装するためにはリアPUキャビティーの加工も必要になることを意味しているのです。

まずは幅の問題を解決します。6ウェイ用に開けられたPUキャビティーは3ウェイブリッジを載せると両サイドに約1mmの隙間が開きます。そこで2mmの角棒を切りととのえて予め塞いでおきます。一応同色のステインで着色しておきますが、ブリッジを取り付けるとほとんど見えるか見えないかという感じになります。

次に長さの問題ですが、ピックガードとブリッジの隙間が広いと不細工なので、オリジナル同様2mmほどの間隔をはさんでブリッジを載せると、ピックアップがキャビティーに収まり切れないことが分かります。そこでこの部分もトリマーを使って若干削っておく必要があるのです。

　　　　　　　　　　【右上がヘッド方向】

さらに次の問題を解決します

SQUIERの場合、ブリッジアースがブリッジの真下からコントロールキャビティーの方向に真横に通してあります。それもたった1本のワイヤーを通すだけなのに、何と6mm径のドリルで開けてあるのです

これをそのままにして3ウェイブリッジの載せてみると、ブリッジ固定用ネジのうち右から2番目のネジ穴が、ブリッジアース用の穴と重なり、右端のネジも内部でトンネルと交差してほとんど効かないと思われます。

　　　【ブリッジの下側の穴は6ウェイ用の固定穴】

そこでこのアース用の穴は6mm径の木材で完全に塞ぎ、アース用のトンネルはリアPUキャビティー方向に2mm径の穴を新たに開けておきます。

【6mm棒を打ちこ込む前に一度きれいに中をさらっておきます。】

上の画像ではアース穴(楕円)に加えて6ウェイブリッジを固定していた3つのネジ穴(下側)も塞ぎ、バックローディングの弦通し穴(6個)とアース用の穴(中央上)も開け終わった状態です。

⑤と⑦の塗装さえ完了すれば、あとは楽勝ですね

SQUIERテレを50年代風にちょいカスタム①