実際に愛用していたUSA製オリジナルと、単なるコレクションだった国産コピーを並べた先回の画像
ギタースタンドの一番手前だけが空席になっていました。
その席に立てられていたのは、おそらく今回紹介するギターだと思われます
今では考えにくいことかもしれませんが、コピー全盛期の当時は、日本を代表する楽器メーカーであるYAMAHAでさえ、FENDER・GIBSONのコピーに手を染めていました
しかしトーカイやグレコのように、現物を入手した上で細部にわたって採寸、解析してその再現を試みた形跡は全くなく、ボディーシェイプからザグリの形状、パーツの規格などもいちいち違っていて、他メーカーの部品を使ってカスタマイズしようにも互換性がありません。
【あまり出来が良いとは言えないヤマハのストラトコピー:SR500】
私がこれを入手したのは2000年頃。池袋の石橋楽器で2万円前後だったと記憶します。もちろん「白(黄)メイプル」だったことで買いました
もうバンド活動も下火になっていた頃で、弾くというよりスタンドに立てておければそれで満足だったわけですが、そうは言っても実際に弾いていると、不満のある部分について「なんとかしたい」と思ってしまうのは、まだプレイヤーとしての本能が眠ってしまってはいなかったということか…
結果、ボディー、ネックの本体部分とペグチューナーを除き、ほぼ全てのパーツを交換してしまうことになってしまいました。
あまりにも多くの部品を一度に交換してしまったために、何が功を奏したのか分かりませんが、私の中では、オリジナルのフェンダーUSA製を含む全てのストラトの中で一番好みの音が出るストラトとなっています。よって今のところ手放す予定も無しです
では、一体どのような所を弄ったのか、以下に解説して参ります
まず、このモデルを弾いたことのある人であれば知っていると思いますが、フレットが低い
私は50年代のGIBSONレスポールカスタムを弾いたことはありませんが、これが「フレットレスワンダー」というものなのか、とにかくチョーキングがし辛い
最初、よく弾き込まれたためにファイリングを繰り返し、このような状態になったのかと思っていましたが、その後、中古楽器店やハードオフなどで見かける物も全てそうなので、これはオリジナルからしてそうなのだと知りました(ストラトに限らずプレべも同じです)。
それでいきなり、購入金額をはるかに超える金額を払ってリペアショップでリフレットしてもらいました。その際、工房さんにはかなり無理を言って、指板の塗装を弄ることなくリフレットしてもらいました。
【オリジナルよりも太くて高いフレットに交換】
一般的にメイプル指板のリフレットは、リフィニッシュまたはオーバーラッカーが必要になりますが、この個体はネックの色焼けが激しかったので、指板だけ白っぽくなることが嫌だったのです
今であればフレットの打ち換えも自分でやるし、ネックを焼けたアンバーカラーでリフィニッシュする術も心得ていますが、当時はそんなカスタムの知識も技術もなく、「弾く」方がメインでしたから…
ナットもブラス製に交換していますが、これは御茶ノ水のESPクラフトハウスでやってもらいました。
実は、ナットをブラス製に交換しても大した意味はありません。ほとんどの音はフレットとサドルの間で鳴らされるからです。なのでサドルの方も、たまたまあったブラス製の物に交換しています。こちらは大いに意味があるでしょう。
ちなみに、ナットの画像から指板がラウンドボードの貼りメイプルであることが分かりますが、それなのになぜかネック裏には「スカンクストライプ」があって、ワンピースネックのようにトラスロッドは裏仕込みになっています。
次に内部を見ていきます
ピックガードを開けて驚くのは、ピックアップの配線を通す溝が、ボディーの中央ではなく1弦側に寄っていることです。
これは同時期のグレコのストラトもそうでした。昔は見えない部分までは追求していなかったようです。
そして電装品ですが、ピックアップを含むアッセンブリーはGRECOのストラトの物に交換しています。
ピックアップは3弦のポールピースが短い「ショートG」スタイルのコピーで、ワイヤーをレトロな網線に交換しました。
セレクターは3ポジションだった物に、私が軽いクリックポイントを設けてハーフトーンポジションで止まりやすく改造しました。
またPOTは「0」ポジションで抵抗値がゼロになる「FULLアップPOT」にチェンジ。コンデンサーはGRECOのままですが、配線材をプロヴィデンスの配線材で引き直しました。
とにかく、このヤマハ製ストラトは見様見真似で作ったとしか思えないほど各パーツの寸法が合わず、コントロールキャビティの内側を切削しないと蓋(ピックガード)が閉まりませんでした それで内部を彫刻刀で雑に彫っています。今思うと酷い仕事ですね
なにせ大昔の仕事なので…(自分用だし)
いずれ時間ができたらきちんと加工し直そうと思います。
それからトレモロユニット本体部分もGRECOの物に交換してあります。
【天下のヤマハなのに、スプリングハンガーが6弦側に寄っています】
ヤマハのオリジナルは、日本人の小さな手に合わせた10.5㎜のナローピッチだったのですが、長年の愛機は全てオリジナルの70年代ストラトだったので、やはり持ち替えると違和感が大きかったからです。
DUCKのように色焼けが激しく、ネックジョイント部にはストラトにありがちなクラックがあります。
ネックを外すと全然キツキツではないので、木部が割れているのではなく、単に塗装が縮んでヒビ割れただけではないかと思います。その証拠にポケットから離れたところにもヒビが入っています。
楽器へのこだわりは人それぞれで、オリジナルの本物にしか価値を見出さない人、コピーやレプリカが、いかにオリジナルに肉薄しているかに興味と感心がある人、パーツを色々取り替えて音の変化を楽しむ人等々…
これで「自分の所有楽器」の中でストラトは最後の1本になりましたが、紹介した中で一番チープな偽物のストラト(ヤフオクに出しても1万円にもならないでしょう) が、私の「No,1ストラト」だったというお話でした