盆の帰省やオーダー品の作業に忙しく、新作に着手できないため、1年ほど前に連載していた「自分の楽器」シリーズの続きを再開しようと思います
このシリーズの前回の記事⑩で、「これで白メイプルストラトは本当に本当におしまい」なんて書いていますが、言い方が正確ではありませんでした
「FENDERオリジナルの70年代ストラトはこれでおしまい」
と書くべきでした
90年代に本職が忙しくなってバンド活動が出来なくなって以降、衝動買いした1・2の例外を除いては高価な楽器を買うことはほとんどなかったのですが…
2000年代初頭の「ジャパンヴィンテージ」ブームに飲み込まれる形で元々大好きだったトーカイのSSシリーズを集め始めました(なにせ本物の10分の1で買えますから)
気づけば一時は最大9本ほど持っていたようです
【奥の8本はオリジナルFENDERでその手前9本がtokai(スパロゴ6本・Tロゴ3本)】
【手前の2本はFERNANDES石ロゴ期のFST-50(トーカイ楽器製造)】
今ではその大半を手放してしまった訳ですが、今回紹介する1本は最後の最後に残った1本です
トーカイSSのグレードには、36、40、48、60、80という5段階になっています。カタログには65N、85Nというのもありますが、これはそれぞれ60、80のナチュラルフィニッシュ版です。ナチュラルには特に木目の良い材を選ぶせいですが、この設定は当時の他メーカーも採用していました。
グレードの違いによる仕様の違いは、当時のカタログに一覧表が掲載されています
【右は80年のvol.3,左は81年のvol.4】
裏は当時話題になった、ヴィンテージ各年代の仕様違いを詳細にまとめた手書きによる解説で、多くのキッズがオールドについてのウンチクを初めて知った歴史的研究でしたね
(※この年齢になると、裸眼で読むには困難を覚えます)
ちなみに、私は70年代中期から80年代初頭の国産各メーカー、各年代のカタログを相当数収集しました(訳は後日…)。
言うまでもないことですが、当時タダで配布されていたカタログも、今ではかなりの値段で売買されています。
ヤフオクや東京神田の音楽冊子専門の古書店などで地道に集めました。少なくとも20万円ほどはかかったと思います
「そんなバカな‼」とおっしゃる方もおられるでしょうが、
たとえばコレ
1979年のvol.1
なぜか「MANUAL」とうたってますが「カタログ」です。
単なる商品の諸元だけではなく、各パーツや指板などの年代ごとの仕様違いなど、こだわりのポイントを事細かに解説しているために、カタログと一線を画したかったのでしょう。
元々タダで配られたこの冊子だけに1万円払いました
SSは5段階だと書きましたが、言うまでもなく当時のトーカイは「スモールヘッド」の50年代メイプルネックモデルや、60年代ローズネックモデルも何段階かのグレードに分けて販売していました。いわば仕様の異なるFENDERストラトの歴史を一斉同時に製作していた訳で、今思えば日本メーカー凄いです
知識のなかった当時の我々は、アメリカのFENDERも同じように安いグレードやスモールヘッドも、一緒にラインナップしているものと思ってました
話がそれました
そんなSS5グレードの中でも、私が集めていたのは主に「40」です
【最終フレットの下に刻印があるのは初期の製品のみ】
なぜかというと、それが70年代オリジナルに最も忠実だからです
まずはペグ
オリジナルFキーとほぼ同じサイズや構造です。しかし後年の物は角ばった厚みのある物に、グレードの高い48や60は6角形のロトマチックタイプになり、さらに80になるとブラスナットやブラスブリッジ、ピックアップは当時流行りのDimarzio製ファットストラトになります。
こうなるともうヴィンテージどころか70年代オリジナルとはかけ離れた楽器になっています
CNCルーターによる正確かつシャープな切削痕で、なおかつ需要を満たす大量生産も可能になりました。
後で述べますが、スパロゴ初期の製品には、後の製品に見られるようなボビン底面の「E」スタンプもまだ見られません。
SSシリーズは、当時(70末~80年代)のFENDER現行品がモデルなのでブラックピックガードの物が多い(例外あり)のですが、フェンダーJAPANの白3プライに換装しています。ただし、それからも相当な年月が経つので、変色して違和感なくなっています。
【新しい白ガードとの比較画像】
【3点留め、マイクロティルト機構も再現】
80年代に入ってからのSSシリーズとの違いは、ピックアップのポールピースに見ることができます。
後年の物は、75年以降のFENDERオリジナルと同様、フラットポールピースなのですが、当機は画像のように、指板のアールに合わせて3・4弦用は高く、1・6弦用が低い「アーチドポールピース」になっています
これは、少し上の画像にあるFERNANDES製FST-50にも見られる仕様で、当モデルがトーカイ楽器製造であったことを裏付ける根拠にもなっています(他にも指板エンドのグレードを示す数字の刻印など)。
私は両者を見比べて共通の特徴が多いのは昔から感じていましたが、「ジャパンヴィンテージ」本にしっかり書かれていて、「やっぱりね~」って感じでした
とにかく30年にわたって所有していた楽器なので別れ難い思いはありますが、今では弾くよりも弄ることがメインになってしまい、その上新しい事業に割くべき時間や労力が大きくなる一方なので、そろそろ手放そうと思います