先日フェルナンデスFST-50のメンテ記事を書いた際に予告していましたが、ー昨日はトーカイSSのメンテを実施しました。
ポリ塗装が乾き切ったせいでしょう。所々クラックが見られますが、木部に達するようなクラックではありません。
ラッカーであればウェザーチェックになるのでしょうが、ポリだとネジ穴の周囲などに見られるようになります。それ以外はフレットの減りも少なく、ネックの状態も良好で、電装系も簡単なメンテでガリもなくなりました。40年物としては稀に見るくらいの逸品です。
82年頃の「Tロゴ期」の物ですが、いくつかアレンジを加えています。
その前に、まずは前回取り上げた「マイクロティルト機構」を見ていただきましょう。
3本とも同じ木ネジで留められています。機構のイモネジを受けるドーナツ形の金具の中央はネジ山が切られておらず、このドーナツ穴の中央に木ネジが入るようになっています。
(FST-50と)同じ時期に同じ東海楽器が製造していながら、フェルはオリジナル同様の構造になっており、トーカイSSはそうしていないという状況は、パテント料が絡んでいるとしか思えません
なお、同じくコピー精度を競っていたGRECOの場合、気合が入っていたのはスモールヘッドのモデルだけで、ラージヘッドは(80年まで)SE-450、SE-500、SE-700があって、いずれもブレットヘッドではない70年モデルなのでネックジョイントは4点留め。ペグはロトマチックなのでコピー精度は追及していません。
81年のカタログではSE-500が消えて700と450だけになり、ブレットヘッドになって再登場しますが、ネックは4点留めのままだったと記憶します。カタログでは裏側の画像がなく確認できませんが、各パーツを取り出して解説している記事でもジョイント部の解説記事はありません。もしモデルチェンジを機に新機構を導入したのであれば、当然ながらアピールポイントとして解説したでしょう。
ではアレンジポイントですが、まずピックガードを交換しました
トーカイSSは、当時の現行品のコピーだったので大半は黒の3プライガードで、白もあるにはあったと思いますが極めて少なかったはずです。コレも入手時は黒でしたが、これをフェンジャパか何かホワイトの3プライに交換しました。ただし交換してから20年以上は経過しており、すでに黄ばんでノブの跡もあります
ピックアップカバーも同様です。ただし、3個のノブとスイッチノブだけはトーカイに特徴的なパーツで、フェンジャパの物とは質感が大きく異なっていたのでトーカイのオリジナルホワイトパーツを使っています(もうホワイトではなく茶色ですが…)。
次にペグですが、これは一見FENDER社のFキーのコピーを搭載していましたが、Tロゴ期の物は若干厚みがあって角ばった形状なので、もっとオリジナルに近い形状だったスパロゴ期の東海製パーツに換装しました。
このスパロゴ期の「Fキーもどき」は、非常に良くできていますが、実は黒3プライガード期のパーツとしては不忠実な構造をしています。
ストラトの仕様変更に詳しい方はご存知のように、プラパーツの白から黒への変更は、76年から始まり、在庫の切れたパーツから順次黒に切り替えられていきます。1976年にはピックガードのみ黒のストラトが多く見られますが、その後PUカバー、スイッチノブ、アームキャップ、コントロールノブ、トレモロカバーの順に黒パーツへの変更が進んで行ったようです。
同じ76年途中からチューナーも変更されており、FENDER自社生産のFキーから、シャーラー製Fキーに変わっているのですが、スパロゴ期のトーカイSSには、ブラックガードになる以前の自社生産Fキーの忠実なコピーが使われています
どっちも外見は「Fキー」なので見た感じは変わりませんが、まずはオリジナルの自社生産Fキーとシャーラー製Fキーの比較画像を見てください。
【左:シャーラー製 右:FENDER製】
【左:シャーラー製 右:FENDER製】
表側は同じ「F」の刻印ですが、ペグポスト側から見ると、シャーラー製の根元部分には頑丈なアウターチューブがあって、ヘッド木部にはロトマチックと同じように10mm前後の穴を開ける必要があります。
オリジナルFキーの方は、クルーソンタイプと同じようにシンプルな構造でポストがそのまま出ています。ヘッドには6mm程度の穴があれば充分です。これらギアの部分の違いは、ギターに搭載してしまえば外からは違いが分かりません。
これらを外から見分けるには、取り付けたペグを下から見れば明らかになります。オリジナルFキーは、シャフトの先端がギアカバーに開いた穴から確認できるのに対し、シャーラー製Fキーはカバーに穴が開いておらず、シャフトの先端が見えないようになっています。
【左:シャーラー製 右:FENDER製】
このオリジナルFキーは、おおむね67年後半から76年途中まで使われており、トーカイSSは、(黒ガードではなく)白ガード時代の自社生産型を忠実にコピーした物になっています
【左:TOKAI製 右:FENDER製】
【左:TOKAI製 右:FENDER製】
【左:TOKAI製 右:FENDER製】
もっともシャーラー製Fキーをコピーするとなると、それはそれで問題ではあったでしょう。
いずれにせよ、このスパロゴ期のペグをわざわざ別途入手してTロゴ期のSSに搭載しました