手早く組み上げて「さあセットアップ!」と思ったのですが、1~2弦が鳴らない、伸びない
原因はコレ
ナットを見てください
3弦も怪しいですが、1弦と2弦はナットの溝がユルユルで、まったく弦をホールドしていません
ナットの中で弦が暴れて振動エネルギーの半分はロスしている感じです
試しに3弦を2弦の溝に入れてみると、これでもまだ余裕がありそうな感じです
どうせプラスチックナットだし、作り直すことにしましょう
①ナットを外したら溝をきれいに掃除します
②幅を合わせたナット材を溝に固定し
③上部を320番のペーパーで削って整形していきます
④あくまで私のやり方ですが、1弦と4弦の溝を2~3弦より先に切っておくと、間隔の目測を誤るリスクを軽減できます
⑤私はベースの場合、溝切りの最終段階では「弦」そのものをヤスリとして使うことで、隙間を極限まで減らす努力をしています。接触する現物どうしを擦り合わせるというのは、自動車(バイク)エンジンの「バルブの擦り合わせ」作業と同じ原理です
⑥最後は600番⇒1000番⇒2000番で研磨してツルツルの象牙のように仕上げて完成
なんか、ここのところ毎回ナットを作り直しているような気がします。安いからいいけど…
よくよく考えてみると、これも無理からぬことのように思えてきます。
実はナット周りの作業というのは、機械任せにできる部分などまったく無く、ほぼ全ての工程を手作業でやらなければならない上に繊細さが求められる作業でもあります。
ネジ穴も垂直に開けられないようではとても務まらない部分です。
ここ数日の記事でも見たように、古いフジゲンやフェルナンデスの製品であってもナットは修正を余儀なくされました
昔の記事でも書きましたが、実のところこれは作業スキルの問題というよりは、量産品の限界といった類の問題です。役割分担の上で流れ作業で生産される工業製品の場合、自分だけ丁寧な仕事をしようとすると、たちまち目の前に未作業品の山が積み上がっていくことになります。
私はリナットの作業に2~3時間ほどかけますが、その間に工場作業員は10本や20本は仕上げるはずです
このような事情を考慮すると、ナットの溝切り用の工具は大変高価ではありますが、ギタリストやベーシストは1セット揃えておくのがよいと思います。数こなせば決して難しい作業ではありません。
「SQUIERは初心者には安心してお奨めできます」…なんて誰が言ってんだ