こちらも長期放置中ですが、忘れてはいません
前回記事は①が3月19日で②が3月25日です
アウトプットジャック付近の作業で終わっていましたが、作業再開後
①電装系の配線
②新たに必要となる配線のための穴開け
③ブリッジの位置決め
④ピックガードの製作
⑤弦の裏通し作業
⑥ネックポケット形状の修正
を実施しました。
①これはスペックマニア向けにCTSポットやヴィンテージ風セラコン、SWITCHCRAFTジャックなどのUSA製品を使い、クロスワイヤーで配線しています。
②配線の穴開けはロングリーチドリルを使って10分もあれば終了する作業のはずですが、この縦型のコントロールキャビティーの位置はブリッジとジャックを結ぶ直線上にはないのでドリル1本で貫くことができず、コントロールキャビティーとブリッジを結ぶトンネルと、コントロールキャビティーとジャックを結ぶトンネルを別に開ける必要があります。しかも小さなコントロールキャビティーからは浅い角度でブリッジを目指すことができず、両側からV字型のトンネルを開けるしかなく難しい作業でした
これが最終的なエスクワイヤーのデザインが、1stプロトであるスネークヘッドのようにジャック穴からブリッジまで一気にドリルで貫けるようなデザインになった理由だと思います。
2ndプロトは、おそらくプレイヤーの意見から試されたコントロール配置だったのだと思いますが、これは生産効率の点から却下されたのではないでしょうか?
いずれにせよ、こうやってレプリカを製作することで、レオの試行錯誤の過程を追体験しているような印象を受けます。
③ブリッジの位置決めはオクターブ調整に関わる重要項目ですが、通常のテレキャスターの場合はピックガードのポジションとの関連もあって調整に手間取る作業でもあります。フロントピックアップのないスネークヘッドや2ndプロトは異なるデザインのピックガードなので自由度が大きいですが、そのかわりブリッジの「角度」の目安となるラインがありません。そこで実際には装着しないテレ用のピックガードを仮置きし、ブリッジの位置決めに利用します。
④ピックガードはいつものワンオフ製作です。過去に製作した1号機やスネークヘッド用を製作した際の型紙も保存していますが、素材のメーカーが違えば、いや同じであっても、微妙な個体差があるので型紙がそのまま使われることはほとんどありません。それはOPB等の場合でも同じで無数の型紙が残っています。
一見するとスネークヘッドと同じデザインですが、テレ本の写真で比べると全然違います
スネークヘッドのピックガードはボディーエッジの露出が多く、2ndプロトはエッジぎりぎりで、ブリッジの切り欠き部分の形状も違います。当然どちらも手作業で作られたものでしょう。いずれにせよクリアファイルを使って新たな型紙を起こします。
そして電動ノコで大雑把に切り出し、繰り返し現物合わせをしながら微調整を加えつつ整形していきます。ハッキリ言って私の物の方が現物より丁寧に作っていると思います
⑤弦の裏通し作業については繰り返し取り上げてきました。ブリッジの位置決めをした後で「垂直ドリルガイド」を使って3mmの穴を6個ボディーに貫通させ、裏側はブッシュ径9.5mm×深さ9.5mmに拡張します。前回のSQUIERテレの50年代風カスタムでは国産の10mmのパーツを使ったかと思いますが、この9.5mmがUSAに一番近いサイズのようで、穴と穴の間隔は1mmほどにしかなりません。
高い精度で作業をしないと綺麗に並ばないだけではなく、ブッシュ同士がくっついてしまうことになります。また、深さも慎重に決定しないと、バラつきがあると打ち込んだ時点では揃っていても、弦を張った際に張力で引っ張られて一部が深くめり込んだりします。私自身もこれまでに幾通りもの方法を試し、失敗しながら習得してきた技術です。
⑥は今回想定外の作業で、ネックジョイント部の修正作業中に気づいたのですが、このネックポケットにはCNCルーター加工による2つの半円形の窪みがあります。これはオリジナルFENDERにおいても1977年のCNCルーターの導入と同時にストラトやテレのネックポケットにも現れる加工跡で、ピックガードがあれば隠れる場所ですが、この2ndプロトだと露わになってしまうので修正が必要です
ちょっと話が横道にそれますが、オリジナルFENDERは何年製までが「ヴィンテージ」と呼ぶに値するか、人によって定義が異なりますが、一番厳しい人はいまだに1964年のプリCBSまでと言いますし、私が高校生の頃はジミヘンなどが使用した60年代後半の初期CBSもそろそろ「ヴィンテージ」と呼んでいいのではないかという議論もありました。年数だけを言うのであれば、1950年代製が1980年に四半世紀ほど経過していたわけで、60年代の物もその頃は20年にならんとしていた訳です。無論2020年の現在、20年以上経過したからといって90年代の物を「ヴィンテージ」と呼んだりはしません。80年代の物でもそうです。
70年代の物は現在「ヴィンテージ」と呼ばれつつありますが、それは年式ではなく、「仕様」が問題とされているように思います。仕様変更の多いストラトが分かり易いと思いますが、クソ重い70年代末のSシリアルを「ヴィンテージ」と呼ぶのは極端な立場だとしても、その基準は74年~75年に変更されたピックアップの「スタッガード」か「フラット」かという点で多くの場合意見の一致をみているような印象です。この付近の年代はシリアルNOがジョイントプレートからヘッドに移されたり、プラパーツに黒い物が混じりだしたりと変更が多いのですが、77年のCNCルーター導入によるボディー形状の変更はかなり大きな出来事で、比重の大きいアッシュ材に加えてコンター加工の分量が大きく減らされ、面取り加工も省略され、重く角ばった印象になりました。この変化を考えると、最小限の工作機械で切り出され、手作業で整形するという旧来の方法で作られた1976年製まで「ヴィンテージ」と呼んでよろしい、という意見には納得できます。
話を元に戻して・・・すでに塗装も済ませていたのは失敗でしたが、放置するわけにはいかないので、このCNCルーターによる加工跡を修正します。パテなどは使用せず、ポケット部分の塗装を削って木材で埋め、また部分塗装を施して痕跡を消します。予定していなかった作業でしたがすでに終えています
次回は完成品を披露したいものですが、どうなることやら・・・