最後に一番楽なブリッジの換装をやります。元ついていたブリッジはオーソドックスなPB・JBタイプでしたが、これをフェルナンデスの17mmピッチブリッジにチェンジします。

 

楽器をリビルドする場合、製造国やブランドにかかわらず、既製品の全てにおいて工作精度を最初から信頼してかかってはいけません。安価に作られている中国製は言うに及ばず、「国産ヴィンテージ」などと持ち上げられているグループや本場アメリカ製でも基本は同じです。「私の加工は精密だ」と自慢したいのではありません。量産品の場合は、月産何本とか日産何本とか、とにかく各工程で1本にかけられる時間は数分から長くて十数分といったところではないでしょうか?私のようにリビルド品1本に3週間とか4週間かけられる人間とは尺度が違うということですひらめき電球

 

今回のIBANEZのSR360を例に取ります。フェルのブリッジも5点留めではありますが、ネジの配置はまったく異なります。5点留めであることには変わりないので、わざと中央のネジ穴1つだけ残して両脇2本ずつのネジ穴だけリフィニッシュの前に埋めておきました。

この穴を使ってフェルのブリッジを取り付け、強いテンションがかからない程度に弦を張ってみます。

 

2~3弦の間にある(薄っすらと見える)ドットポジションマーカーの位置や、1・4弦の外側のフィンガーボードスペースを見ると明らかなセンターずれを起こしており、目測で1.5mmほど4弦側に寄っているのが分かります目

 

これを確認したら、ネジを外して中央の穴も埋め、あらためて位置修正した穴を開け直します。

そして残った4つのネジ穴も、先に錐を使って下穴を開けてから、あらためてドリルでその穴をさらいます。

これまで公開した作例では、全ての穴を「垂直ドリルガイド」を使って開けていますが、今回はセンター出しと新ブリッジの取り付けを同時に行うために「錐」を使用しました。

エレキギターの製造現場では、ネジ穴開けは、ほぼ間違いなく「いきなりドリル」でやっていると思います。それが、これまで無数に指摘してきた斜めにネジが入っている原因になっています。「錐」は一見古風な道具ではありますが、材料に対して垂直に穴が開けられていることを常に確認しながら作業できるという長所を持っています。これがガンタイプのグリップを持つ電動ドリルでは、慣れた人間でも垂直にできているか、いつも心もとないものですうーん

 

作業後の画像では、当然ながらセンターずれは修正されています。

これで今回の作業は全て終了です。依頼主さんによると今回のコンセプトは、Gary willisモデルのようにしたかったということで、画像を探してみるとこのようなモデルのようです。

数千円で落札したというIBANEZのSR360が見事に変身しました音譜