このモデルをもっとも特徴付ける「増幅回路」については先に少し触れました。一般的には「ブースター」と言われていますが、いろいろなサイトを検索すると「ディストーションコントロール」という記載もありますし、とどめは2010年に本人がインタヴューで「オーバードライブが入っている」と答えています
・・・というわけで、自信を持って世に送り出そうと思いますが、そのコントロールノブは、ボリュームPOTによる無段階可変増幅ではなく、クリックポイントつき5段切り替えの歪み回路です。ノーマル、クランチ、オーバードライブ、ディストーション、ハイゲインディストーション、と劇的に変化しますが、後ろの方はPOLICEやるには不要かもしれません(笑)
オリジナルにはボリュームとトーンの間にこの回路のON-OFFスイッチが装備されていますが、今回装備した回路は絞った位置がノーマルサウンド(要するにOFF)なのでOFFのためのスイッチはありません。しかしスイッチを省略してしまうとルックスがショボくなるので、フロントハムバッカーのコイルタップスイッチとしてみました。アンディーは横向きに装着しているので、フロント側に倒すとハムバッカー、リア側に倒すとシングルコイルになります。
それとフェイズスイッチが装備されています。アンディーはカッティングの際にアウト・オブ・フェイズを多用してるように思います。カッティング時のシャープな高音は、オリジナルテレに標準装備されている0.001mμキャパシターも重要な役割を果たしていると思われるので忘れずに装着しています。
このスイッチはリアPUの位相を反転させるもので、フロントPUとのミックス時にONにするとアウト・オブ・フェイズサウンドになります。フロントPUがハムでもシングルでも良く効きますが、私の製作品を落札する方の中にはエレクトロニクスについての知識がほとんどない方も多く、どっちがノーマルサウンドでどっちがフェイズサウンドか分からないと連絡をもらう事も多いです
【フェイズスイッチは6個の端子全てに結線する必要があります】
確かに70年代や80年代ならまだしも、近年は最初からフェイズスイッチを標準装備したギターなんて見たことないような気がします。なので少し説明しておこうと思います。
フェイズ(位相)とはピックアップのHOT(+)とCOLD(-)のことですが、ピックアップを単独で鳴らす場合には双方を入れ替えてもサウンドに変化はありません。しかしもう1つのPUとミックスする際に片方のフェイズが逆になっていると、何というか、低域が削られて高域が強調され、人によっては「鼻がつまったような」と表現されることもありますが、タイトな音色になります。フュージョンなどではこのフェイズサウンドにコーラスをかけたりして、キラキラした音色のアルペジオがバックに聴こえることがあります。
ちなみにハムバッカーにはコイルが2つあるので、4芯のモデルであれば(あるいは4芯に改造すれば)単独でフェイズサウンドを出すこともできます。今回のギターでは、スイッチをリア側に倒すとイン・フェイズ(ノーマル)、フロント側に倒すとアウト・オブ・フェイズになります。
【今回はいつにも増して結線する部品が多いので間違わないように整理します】
自分でもテレにフェイズスイッチを装備してみようという方は、以前シリーズ(直列)接続回路の件で記事にしたのと同じ作業が必要です。テレの場合はCOLD線とアース線が共有されていることが多いのでこれを切り離し、ボトムプレートから直接アースを取ってください。
【リアPUもアルニコ仕様】
先に記したようにフェイズスイッチとは位相反転スイッチのことなので、本来のHOTがCOLDに、逆にCOLDがHOTになります。このときCOLD=アースになっていると、当然ながらギター信号もGROUNDに流れていってしまうことになるので切り替えると音が出ません
完成してからフェイズスイッチを弄っても、片方からしか音が出ないならこの作業を忘れているということです
仕上げはバックパネルの製作です。オリジナルよりもずっとコンパクトな回路なので、ひとまわり小ぶりなパネルで充分カバーできます。レリック加工もそうですが、私はオタク的にドンズバルックスにはこだわりません。
最後に注意点ですが、アクティブの大半がそうであるように、ギターのアウトプットジャックが電源のON-OFFを兼ねているので、弾かないときは必ずジャックを抜いてください
それと使用しているジャックはステレオジャックなので端子が3本ついていて、抜き差しが通常のジャックよりも固くなっています。中途半端にしか入っていないと音は出ますがトーンが効かなかったりノイズが出たりという不具合が生じます。最後までカチッと差し込んでください
次回は完成した姿を公開します