SGベースの、もう一つのオーダーは極太ネックのリシェイプです。
ベースのネックのリシェイプは、ギターの場合ほど簡単ではありません。贅肉をそぎ落としていくという作業自体は同じなので、「何が簡単じゃないの?」と言いたくなりますよね
確かにネックを削る作業は同じです。問題は、ベースの場合はギターよりもネックが長い上に弦のテンションも強大なので、テンションがかかっていない状態とチューニング状態ではネックの「反り」の状態がギターとは全く異なります。その点ネックを細く削るという作業は、大げさに言えばネックの強度を落とすという意味を持つので、当然テンションバランスにも変化が生じます。それをロッドを弄ることで微調整しないといけません。スリムネックが好みだからと調子にのって削り過ぎると取り返しのつかないことになります
今回のSGベースは、FENDER系で弄り慣れたメイプルネックではなくて、メイプルほど強靭ではないマホネックなので特に神経を遣いました
できるだけ強度を損なうことなく、より細くなったように感じるためには、厚みの部分はあまり削らず、トライアングル気味に削るのがコツです。ただし、57年ストラトでよく知られるトライアングルネックは好みが分かれるところなので、やり過ぎると違和感が生じます。これをあまり意識されない程度に削るのが肝ですね。
ちなみにネックの厚みを薄く削り過ぎると強度が落ちるだけではなく、ネックが幅広くなったように感じます。かつて失敗から学びました
ネックを削ったあとは黒く塗らず、木地むき出しのままクリアを吹いてほしいというオーダーなので、境界は大雑把な仕上がりのままクリア吹いてあります。
それよりもネックを弄っていて気づいてしまったのがコレ
ペグ外すと、何度交換されたのか分からないくらいネジ穴だらけでした。古い穴が塞がれていないので、一見してどれが使用中の穴か分かりませんし、スカスカでほとんど効いていないネジ穴もあります
ベースのチューナーは、ギターよりもはるかに大きなストレスにさらされているので足元は固めておいてあげたいところです。よってこれも頼まれていないおせっかいですが、一度全て埋めた上で開け直しておきます。
それからペグブッシュが1つだけ違う物になっているのはまだいいとしても、サイズの合わない物がマスキングテープを巻かれて無理やりアダプトされています
ここはベース弦の強大なテンションをダイレクトに受けるパーツなので、きっちり合うように修正し、4つとも同じ物に交換しました。
実はこのベース、まだまだ多くの問題を抱えており、ハイポジションが弦と干渉するというので18、19、20あたりのフレットが削り取られていたりと悲惨な状態でしたが、それもネックポケットを掘り下げると共に仕込み角を変更し、ディメンションを見直すことでベタベタのローアクションにしてもビビることなく速弾きに対応できるように調整しました。
以上で全ての作業を完了しましたが、休日だった24日(月)夕方にセットアップまで終えて、その日のうちにオーナーさんに届けたので、またしても完成品の写真を撮り忘れてしまいました
オーナーさんはこのベースを何とebayで米国から購入なさったそうですが、このオーナーさんの目に留まらなければ楽器としての生命を終えていたかもしれません。それがこうして生産国に里帰りし、再び第一線で使用されることになったのですから、復活のお手伝いができたのは私にとっても嬉しいことでした
これでオーナーさんの愛器の3本目を終了し、次にどのようなベースを託されるのか今から楽しみでもあります