中国製では、ほぼ全ての素材に対して必要な作業がネジ穴の開け直しです。それはネックジョイント部に限った話ではなく、ブリッジの取り付けネジ、ストラップボタンの取り付けネジも同様です。作業員はおそらく、ただ部品がボディーにくっつけばいい、という感覚なのでしょう。ヤフオクに出品する際にはいちいち説明しませんが、たとえ国産オールドであって症状の酷いものは修正を施しています。

それから中国製の場合、ペグの取り付け角度の不揃いの修正も定番の作業になります。中国人労働者の中には几帳面な性格の方もいるとは思うのですが、丁寧な作業などやっていられないほどに製造数のノルマが厳しいのでしょう。決して私の作業が技術的に優れているということではなく、時間的制約が無いので、たった1本に20時間や30時間かけることができているというに過ぎません。

 

今回はブリッジのバックローディング化の作業は実施しませんが、リアピックアップのアルニコ化作業を実施します。確か去年夏に詳しく記事にしたと思うので、ごく簡単におさらいします。

                 【ポールピースに磁力はないので互いに引き合いません】

元のフェライトマグネットPUはポールピース自体に磁力はなく、ボビン下に配置されたセラミックマグネットで磁力を得ているのですが、このマグネットを外すとともにポールピースも打ち抜き、新たにアルニコマグネットポールピースを打ち込みます。

                        【右の6本はアルニコなのでくっついています】

その際注意したいのは、S極とN極のどちらを上にもってくるかという点ですが、これはFENDERでも年代によって、あるいは個体によって違いがあり、実際サウンドに与える影響は無い、あるいは無視してよいレベルだと思われます。

重要なのは、今回テレ用CRL4ウェイスイッチを用いてシリーズ接続回路を仕込むので、ハムキャンセル効果を狙ってフロントPUとは逆磁極にしておくことです。そのために実際にフロントPUのポールピースにくっつけて、くっついた面を上に向けてボビンに打ち込みます。

私が不思議に思うのは、レオ・フェンダーはジャズベースでは設計当初からフロントPUとリアPUを逆磁極でミックス時にハムキャンセルさせる仕様にしておきながら、テレキャスターの場合には一貫して同磁極の仕様になっていることです。

 

「不思議に思う」と書きながら、実のところ私は確信を持っているのですが・・・

すなわちレオ・フェンダーという人は、ギターについては2つのピックアップを同時に機能させるミックストーンを実用的なサウンドとは考えていなかったということです。

周知のようにストラトキャスターについては、各ピックアップを単独で選択する3ウェイセレクターがオリジナル仕様で、クラプトン等によってハーフトーンが認知されるようになる70年代まで5ウェイセレクターが導入されることはありませんでした。またテレキャスターの場合にも、現在のようなフロント・ミックス・リアというスタンダードな配線になるのはFENDER社がCBSに売却された後の1967年であり、それまではプリセット・トーン回路で、2つのピックアップのミックスサウンドは盛り込まれていませんでした。レオにとってはギターのミックストーンは論外だったのです。これがテレのピックアップが逆磁極になっていない最大の理由だと思います。

 

ポールピースの交換を終えたらシリーズ接続に備えてCOLD兼用のアース線を独立させます。

                     【ベースプレートから出ている黄線が新しいアース線】

 

リアピックアップの作業を終えたら、次はフロント、今回初導入するやや小ぶりなP-90風のピックアップです。通常のP-90は1・2弦、5・6弦のポールピースの間の配置された取り付けネジでボディーに固定するようになっていますが、このピックアップは普通のピックアップのようにカバー両サイドのネジ穴で固定される形です。さらに私はこのネジ穴にナットを半田溶接することでピックガードマウント方式にアレンジしました。

 

こちらのピックアップも内部でCOLDとアースが繋がっていると思われるので分解する必要があるのですが、ハムバッカーのようにカバーが半田でベースプレートにくっつけてあります。しかも半田タップリで大変そうですチュー

カバーもベースプレートも面積の大きな金属製なので、これ自体が放熱板の役目を果たして温度が上がらず、半田が溶けにくいのです。おまけにポッティングに使われている蝋も溶け出してさらに温度が下がりますチーン

 

不利な条件いっぱいですが、この問題解決学習も知恵と情熱で乗り切りますDASH!

 

やはりCOLDとアースがつながっていますね、すべて切り離してやり直します。

 

赤線が元のシールド線でHOTとCOLDのみ。細い黒線が新しく設置したアース線です合格

これでシリーズ接続の準備が整いましたグッ