実はネックの作業③を一番最初にやったのですが、こちらはいつもの私の製作物で見られるものと全く同じです。ただ今回は本物の「FENDER」ロゴを残すためにヘッド表面だけは残して裏側だけをラッカーリフィニッシュし、プレイで触れる部分はオイルフィニッシュのあと汚し加工を施しました。
完成後の画像を撮り忘れましたが、ヘッド付け根部分の段差も少しだけ面取りを行いました。
作業の②・・・ピックアップ交換です
リアをジャズベ用からプレベ用に交換しますが、その位置決めに悩みました
通常ピックアップの搭載位置は、ハーモニクスポイントの真下に持ってくるのがセオリーですが、プレベのスプリットコイルPUはご覧の通り1・2弦と3・4弦ではポールピースの位置に約28mmものズレがあるのでそれは無視するとしても、ミディアムスケールゆえに通常より狭いフロントPUとブリッジの間のどこにするか
元のジャズベース用PUの中心線上に、スプリットコイルの境目を持ってくるか・・・
そうすると1・2弦用のコイルはかなりブリッジに接近することになります
1・2弦はただでさえ弦の振幅エネルギーが小さいのに、あまりブリッジに近づけ過ぎるとパワーもサスティンも不足することになりかねません
そこで、こういった例を過去に遡って調べてみます
1980年代初頭に本家から出ていた「エリートプレシジョン」
リアPUの1・2側コイルがブリッジぎりぎりまで寄せてあります
しかしこのベースはプリアンプを搭載したアクティブ回路で信号をブーストすることができるので参考になりません
同時期にFERNANDESが同じレイアウトでパッシブの2PUプレシジョンを出していますが、それがどうだったのか・・・今となっては自分で確められません
とりあえず、指定されて同梱されていたGOTOH製ピックアップがどのくらいのパワーを持っているのか、直流抵抗値を調べてみます。むろんピックアップの実出力は直流抵抗値だけではなく、磁力の強さも関係しているので単純には言えませんが。
「9.31kΩ」あまり高くありません。ただパワーを得やすいフェライトマグネット仕様なので、それでバランスをとっている可能性もあります。
ちなみに70年代FENDERのオリジナルPUも測定してみます。
「グレーボビン」のFENDERオリジナルです。
「11.22kΩ」
ついでにもう一つ、DIMARZIOのベストセラー「MODEL-P」
まだ表面に「DIMARZIO」の刻印がなく、パテント申請中のステッカーが貼られた初期製品です。
「11.27kΩ」で、FENDERオリジナルとほぼ同じ値です。
同時期にDIMARZIOの名を世界に知らしめたギター用ハムバッカー「SUPER DISTORTION」やシングルコイルの「FS-1」の印象からベース用もハイパワーと思われがちですが、ベース用は決して高出力を売りにしていた訳ではありません。そんなことをしたらアンプのスピーカーが飛んでしまうでしょう
いずれにしても実装して試すには、ボディーを実際にザグる必要がある訳で・・・
結局は安全策を取ることにしました
自分としては、ここらへんが限界かな~と思いつつ、ピックアップのカバーだけ置いてみます。なんのことはない、フロントPUとブリッジのほぼ中間です
ここだと3・4弦コイルの位置が、親指をかけるにもちょうどいい位置なのではないかと・・・
もう後戻りはできません
この切削、既製品のプレベ用テンプレートは使えませんでした。通常とはピッチが違うので、2つのコイルの重なり具合を実際のポールピースの位置に合わせ、ペンでマーカーをつけてからフリーハンドで切削したものです。ビビリながらの作業でしたが、我ながら上手くいったと思います
あとは防湿のペイントを施し
実際に装着
セットアップして実際に音出ししてみると、まったくパワー不足を感じることはなく、あれこれ悩む必要もなかったかなと・・・
実は、パワー不足への懸念を払拭できなかった私は、保険としてシリーズ接続回路も組み込んでいました。
トーンPOTをスイッチPOTにして、トーンノブのPULLでフロントとリアをシリーズ接続。リアのみの場合とは音色が変わりますが、出力を増大させることができます。結局は無用な心配だった訳ですが・・・
オーナー様にはすでに引き渡し、いたく気に入っていただけたようで、日々弾きまくっていらっしゃるそうです
これは持ち込みのオーダーで、ヤフオク出品用の「お見合い写真」を撮る必要がなかったので、完成品の画像は撮り忘れました