ここ数ヶ月というもの、サンバーストカラーに思いを巡らせない日はない、と言ってもいい日々を過ごしています
「サンバースト」と一口に言っても、写真を見れば見るほどその表情は多彩です。
黒縁の幅が広いもの、狭いもの・・・
赤の幅が広いもの、狭いもの・・・
中央の黄色が明るいもの、暗いもの…
全て本物のヴィンテージですが、こうやって並べてみるとけっこうバラバラで、中にはあまり上手いとは言えない物もあることに気づきます
そもそも我々は、出荷された当時のサンバーストの色味を見ることはできるのでしょうか
とにかくどうもリアルに仕上がらないので、今一度各種ギター本の記事を漁って勉強しています。そこで思いもよらぬ記事を発見してしまいました
参考にしたのは圧倒的に多いストラト本ですが、FENDER製品はギター・ベースの機種にかかわらず、カラーについては時代とともに同じ変遷を辿っているので大いに参考になります。
あらかじめ結論を先に書くと、サンバーストの外周色はブラウンではなく黒でした。これがブラウンになるのは1979年の新しいカラーチャートの「タバコサンバースト」から、ということでした。
「昭和40年男」の私が中学から高校にかけての時代は、まさに70年代末から80年代初頭に当たる時代ですが、その頃のギター雑誌や国産ブランドのカタログでは54~57年モデルの2トーンサンバーストに対して「タバコサンバースト」ないし「タバコブラウン」の呼称を用いています。これは同時代のカラーチャートを基にした誤解だったのでしょう
【ARIA PROⅡのカタログでも】
【GRECOさんのカタログでも】
私が見ていたFENDERの現物も、79年以降の物だったはずです。
…とはいえ、60年代のFENDER製品には、ブラウンの外周塗装が施された物があることもまた事実です。中でも画像の1961年製ディオソニックは明らかな例です。
これなんか、私がダンボールに練習したものと同じような色味です
FENDER社が初めてサンバーストを導入したのは1958年製のストラトが最初で、それから数えて実に61年
我々世代がエレキに目覚めた1980年の時点ではまだ22年ですが、それでも自分たちが産まれた1965年までのスモールヘッド物はすでに「オールドギター」と呼ばれていました。ピックガード下と比べるとすでにかなり退色が進んでいます。
そこで疑問に思うのは、FENDER社の現行品のサンバーストは、果たして当時の新品のサンバーストを再現しているのか? それともヴィンテージ品のサンバーストを再現しているのか?という疑問です
レリック物やヴィンテージリイッシューが古い色味を再現するのは当然としても、スタンダード仕様はそこから自由である得るのか?
ユーザーの多くがトラディショナルな物を好み、現在のFENDER経営陣や、フラッグシップモデルの製造を担当するビルダー、生産工場の塗装担当者も今やほぼ我々と同じ世代かずっと下の人たち。彼らは50年代や60年代の塗装作業を知ってはおらず、我々と同じように雑誌や半世紀前の現物を参考にしています
その証拠に、マスタービルダーの作業場には、(私が参考にしているのと同じ)日本のギター雑誌が多数積まれている写真があります。
上の画像は、イングヴェイのDUCKをはじめ、数々のトリビュートモデルの製作を担当し、「レリックマスター」と呼ばれるジョン・クルーズの書棚です
そう考えていくと、アレコレ悩むよりは、結局は知識ではなく、自分の見た通りの色を吹けばいいんじゃないの? と思えてきました
信号の緑を「青」と言い続けるようにではなく、リムはブラウンではなく、見た目通りの黒で…中央の黄色は、もはや黄色ではなくオレンジ色で吹くことにしました
結果…最初に練習した頃に比べ、より「らしく」なったと思います