【オックスブラッドレスポールを作ってみよう②】

 

画像ファイルをひっくり返すと、私は過去3本のオックスブラッドレスポールを製作しています。色々苦労があったので3本ともよく覚えていますおねがい

 

一番最初に作った物は「PROLOGUE」という珍しいブランドの安レスポールをベースにしました。ヘッド先端の形状がちょっと独特でしたが、ちゃんとしたセットネック構造で、わりとキチンと組んでありました。私としても大変な苦労をしてカスタマイズする訳ですから、あまりに粗雑な物は選びません。

 

二番目はPHOTOGENIC製でした。この2本目は少し大がかりなチャレンジをしましたが、それはまた後の記事で詳しく述べます。

 

三番目もPHOTOGENICで、この三番目から製作過程が画像でも記録されているので、今回はこれを中心に話を進めて行きます。

 

まずは全てのパーツを外してネックとボディーだけにします。ほとんどのパーツはネジを回すだけで簡単に取り外すことができますが、安レスポールの場合は、ブリッジとテールピースのスタッドボルト計4本を外すのに苦労するかと思いますチュー

 

ボディーにダメージ与えずに強固に打ち込まれたスタッドボルトを抜くのは大変な作業ですが、私の場合は自作の工具を用いますレンチ

マスタービルダーが皆そうであるように、職人は既成の道具だけでは満足せず、自分に合った道具を自前で作ることがあります。私自身もカスタムを始めてまだ4年ほどですが、途中「こんなんあったらエエんやけどなぁ~」と思う経験をたくさんしてきました。それで調べても無い場合、「無い物は自分で作るしかない」となる訳ですべーっだ!

 

下の画像がその道具です。特にPHOTOGENIC等の中国製はたくさん扱うのに毎回大変な苦労をするのはゴメンです。それで自作したプーラーがコレひらめき電球

8mm径の長いネジ棒を10cmほどに切り、その片側に穴を開けて4mm径の棒を通しただけのシンプルな道具です。これをスタッドの代りにねじ込んでいくと先端が底を突き、さらに回すとスタッドの土台がボディー表面にせり出してくるという原理です。何の苦労もなく簡単にスタッドが抜けます(6mmのもあります)

      【このとおり、楽に抜くとこができます音譜

 

スタッドを抜いたら、下準備としてボディートップとヘッド表面の塗装を剥ぎ落とします。そしてスタッドを抜いた穴を丁寧にラミン棒(木材)で埋めます。円周の縁の部分の僅かな凹凸にはパテを使ってもかまいませんが、穴全体をパテで埋めるようなことをしてはなりません。パテは成分が樹脂なので、古いギターのバインディングが縮んで割れるように、長い目で見ると目痩せを起こして凹凸が目立つ原因になります。

 

 

穴埋めが終わったら、状態が落ち着くまで数日おいてから、いよいよ新しいスタッドの穴開け作業になります。やり直しのきかない、このモデルで一番重要な作業ですあせる

 

前回の記事で書いたように、ここはトリビュートモデルと同じようにオリジナルよりも若干緩い傾斜角になるのが正解です。基本は元付いていたチューン・オー・マチックブリッジよりも数度余計に傾けますが、それはサドルの調整機構が無いことを前提としているからです。

【※ハンドドリルではなく、ボール盤で正確に垂直に開けます】

 

そして、ここからが一番重要なポイントですが、私の場合、前後位置だけではなく、左右位置にも独自のノウハウを盛り込んでいます

オリジナルのアップ画像をもう一度見てみましょう。

                【リア側】

 

                【フロント側】

 

ジェフのオックスブラッドは、バーブリッジの傾斜角がきついこともあって、テンションのかかった弦が全て高音弦側に寄せられ、著しいセンターずれを起こしています。6本の弦全てがポールピースの位置から大きく右側にずれ、6弦はネックの余白に余裕がありますが、1弦はかろうじてフィンガーボード上に留まっている感じですポーン

よくもまあジェフは、こんな弾きにくそうなギターであの歴史的名演を残したものだと感心しますガーン

 

そこで私は、このズレを最初から見越して、バーブリッジの位置を1.5mmほど6弦側にずらし、加えてテイルピース(兼ブリッジ)のエンド側にわずかな切れ込みを入れることで弦がずれないように固定しています。これらのアレンジのよって弦が完璧にポールピースの真上を通るように細工したわけです

 

 

ジェフのオックスブラッドは弦のズレ方も不均一なので、12弦間は広く、23弦間が狭くなっていますが、そのような不具合も一切ありません

(肝心の完成品の正面画像を撮っていなくてすみませんお願い)

 

こういったアレンジは結局のところ、「ネジ1本、キズひとつまで再現」などというオタク的なもの作りではなく、「より優れたものを」という日本的なもの作りを追求する姿勢からくるのです。

 

かつての国産メーカーは、米国製ギターをコピーする過程においても、独自の進化を盛り込むという気概を持っていました。特にTOKAIはテレのブリッジは6ウェイにこだわっていました。また、オールドストラトをコピーするにしても、ハーフトーンは楽に出せた方がいいに決まっています。でも本物は5ポジションではありません。そこでTOKAIはハーフトーンの位置に軽いクリックを設けて「35ポジションスイッチ」という苦しい名称を付けていました爆  笑

さらにチューナーは、外見はふつうのクルーソンタイプながら、中身はウォームギアに2条ギアを採用するなど、独自の改良を加えていました。GRECOは見た目クルーソン、中身ロトマチックでしたねひらめき電球

 

FERNANDESREVIVALシリーズでは市場の要求に折れるかたちで忠実路線を推し進めましたが、直前の石ロゴFUNCTIONシリーズの頃は、22フレット、ブラスパーツ、ダブルワイヤリングPU等々、FENDERオリジナルを完全に乗り越えることを目指していましたキラキラ

 

しかしまぁ、物の楽しみ方というのは人それぞれなので、アーティスト本人と全く同じ物じゃなきゃヤダ!という心理も理解できますし、不具合、不便、不合理といった点も含めて愛着を感じるというのも大いにアリだと思いますウインク

 

まだまだ続きます・・・