【過去の製作品】前回の続きです。
テレギブ人気に気を良くした私は、調子にのって第2弾を製作出品しました
そう、オックスブラッドレスポールです
私自身は世代からいうと、「ワイアード」⇒「ゼア・アンド・バック」世代ですが、ベック本人が何と述懐しようと私の中ではBBA時代がベックのベストパフォーマンスなので、このギターへの思い入れは強いです。ベックはこのギターをまだ大切に所有しているようで、生きているうちにまたこれでステージに立ってほしいと願っています
まずはこのギターの概要をおさらいしておきます。
ジェフは盗まれたサンバーストの代りにこのレスポールを購入したそうですが、その時点ですでにこのようにカスタムされていたらしいです。ジェフ本人が弄ったのは、有名な日本公演の時についていたピックアップカバーを外したくらいでしょうか。
本来は1954年製のP-90×2基&ゴールドカラーであった物を、ハム×2基&リフィニッシュとのことです。色はオックスブラッドという濃いワインレッドだそうですが、どのような雑誌を見ても黒にしか見えません。私が子どもの頃は「濃いグリーン」という誤情報が流布しており、おかげでGRECOのコピーモデルは緑がかった変な色で塗られています
GRECOは比較的早くこのコピーを出したので、ピックアップカバーが付いていたり、なぜかPUがダブルホワイツだったりします。・・・けれどももっと怖いのは、70年代末製造の物はペコペコのソリアコだったりすることです。GRECOが良くなるのは大雑把に80年以降の物で、79年くらいだと3PUのエースフレーリーやピーターフランプトンモデルも気をつけないとソリアコです
さて、このオックスブラッドレスポールは2010年頃、GIBSONのインスパイヤード・バイ・シリーズから「Jeff Beck 1954 Les Paul Oxblood」として限定発売されました。リアルなエイジド加工が施された最上位機種(50本)は税込み2520000円というお値段
これは本人の持つ現物を細部に渡って3D計測し、キズに至るまで再現してあると宣伝していましたが、我々庶民はオリジナルも252万円もどちらも手にすることはできないので宣伝は何とでも言えます。ただし、252万円の写真が載っている冊子『JEFF BECK』(シンコーミュージック2010年発行P36)と、本物の写真が載っている冊子『The BECK BOOK』(プレイヤーコーポレーション1978年発行P139)が、図らずも同じサイズでページいっぱいにアップ画像を載せてくれているので、並べて比較することはできます。
【左がオリジナルで右がレプリカ】
素人の私でも気付いた点が2つ
①バーブリッジのスラント角度がすぐに分かるくらいに違います。オリジナルは傾斜がきつく、252万円は緩いですね
オリジナルの6弦側を見てください。エスカッションとスタッドボルトの間隔が、ボルト丸ごと1本入るくらい空いています。252万円の方は目測で5mmくらいでしょうか
これは252万円の方が正解だと思います。PHOTOGENICを使って「なんちゃってレプリカ」を製作した私の経験からもそう言えます。サドル調整機構がない以上、オクターブは1・6弦を優先して角度を定める以外ありません。そうするとこのあたりの角度にせざるを得ないんです
FENDERのトリビュートシリーズもGIBSONのインスパイヤード・バイ・シリーズも、「ネジ1本、キズ1つまで再現」なんてウソ言ってまで頑張らなくていいんですよ 弾かずに床の間に飾っておく人ならいざ知らず、楽器なんですから、楽器としての機能が優れている方がいいに決まっています。良くない点は改良しちゃってくださいな
②インスパイヤード・バイ・シリーズの252万円は、フロントにBurstbucker2、リアにBurstbucker3を搭載しているんだそうです。どちらもオリジナルPAFの忠実なレプリカを謳い文句にしているピックアップです。
・・・で、ジェフのオリジナルの画像を目を凝らして見てみると
【こちらがフロント】
【こちらがリア:(ボビンの向きも結構いいかげん)】
・・・フロントもリアもT-top(あるいはT-バッカー)なのが分かります。1967年-1975年頃のGIBSONに搭載されていたピックアップですね。これもPAFの流れを汲むピックアップであることは違いないですが、これが改造された時点で当時の現行品を使ったのか、それとも(ネックを何度も折ったといわれる)ジェフの酷使でその後交換されたのかは分かりません。とにかく1978年の段階ではT-topであったのは写真の通りです。
そもそもクラプトンのブラッキーも、古くから伝承されてきた「3本の50年代のオリジナルのパーツを組み合わせて・・・」という説を我々は子どもの頃からウン十年も真に受けてきた訳ですが、長年の酷使で多くのパーツが交換されてきたせいでしょうか、少なくともクリスティーズオークションに出てきた最終形態では、ピックアップは3個とも1973年のPUデイトが入ったグレーボビンだったというじゃありませんか ブラッキーの初お目見えが1973年(レインボー・コンサート)だったことを考えると、名演のほとんどは1973年製ピックアップの音かもしれません
こういった事実からもスペックマニアのオールド信仰なるものが、いかに滑稽なものであるか分かろうというものです。3大ギタリストたるや、(少なくとも)ピックアップは70年代物です。こうなるとペイジのNo.1レスポールのピックアップだって怪しいもんです(笑)
特にペイジのあの細い音は怪しい・・・私の提唱するトムソン・トーマスの「なんちゃってハムバッカー」説もあり得る(※個人の意見です)
という訳で、【過去の作品】次回は、「オックスブラッドレスポールを作ってみよう」です。