【序論】

いやね・・・すごく大変な作業になることは分かってましたよチーン

 

ピックアップキャビティー1つ掘るのも大変ですしね。ルーターのビットが磨耗するので、あらかじめ20mmから22mmのドリルで大雑把に切削しておくんですけど、ドリルでも負荷が大きくて、56個も連続で穴を開けるとモーターが過熱して焼き切れそうになるので、その度に冷却時間を設けて冷やさないといけないんですショック

 

それでも一度は作りたいと思っていたテレキャスターキラキラ

2016年に本家USAフェンダーから限定リイッシューされたものの、お値段税込み519480円と、「ちょっと試しに買ってみる」にはハードル高すぎなので・・・

 

このモデル、その存在自体をあまりご存知ない方も多いと思うので前置きが長くなりますが簡単にご紹介しておきます。・・・と言っても、当時の工場労働者の証言があるわけではなく、多くのテレ本にも詳しい解説は載っていません。多分に私の推測が入っていることをお断りしておきますパー

 

60年代に入ってジャガーやジャズマスターが発表され、テレやストラトの生産本数が下降線を辿っていた1967年頃の個体に稀に見られる仕様で、その目的は軽量化だと言われています。確かに年代的にも50年代の軽量なアッシュから、70年代の重いアッシュに切り替わる過渡期にあるので、その説には説得力があるとも言えますが、そうすると別の疑問も湧いてきます。

その目的が「軽量化」だけであったとすると、ピックアップ周辺をこれだけ広範囲にえぐり取ることで、そのトーンが変化してしまうとは考えなかったのでしょうか? あるいは、1965年に会社がCBS傘下に入ったとはいえ、1970年まではレオ・フェンダーは顧問としてFENDER社に在籍していたわけで、意見は言わなかったのか、言えなかったのか、そもそもお飾りとして存在しただけで、営業サイドはレオに仕様変更の相談などしなかったのか?

とにかく謎が多いだけに魅力があるモデルということもできますアセアセ

 

私の推測は、やはり営業サイドが「重量」について問題視していたのは事実だろうと思います。1967年生産分の全てにこの加工が施されているわけではないことを考えると、材から切り出されたボディーの重量を計り、一定の基準を越えた物にのみ、この「軽量化」加工を施していたのではないでしょうか?

 

また、それよりも私にとって素朴な疑問は、実際に売り出されていた当時、「ピックガードの下はスカスカですよ」ということを表示して売っていたのか、ということですうーん

 

「密輸業者」という愛称は、いかにも後代になってつけられた印象で、正式名称がないところを見ると、当時は何の断り書きもないまま店頭に並んでいたのではないかと想像します。メンテしようと思ってピックガードを外して「ビックリ!」だったのではないかと・・・近年GIBSONが中身をくり抜いたレスポールを出しましたが、あちらはギターを破壊するかCTスキャンにかけないと分からないでしょう。

 

もし、私が当時(まだ2歳ですが)これを手にしたとして・・・

「おっ、コレ軽いじゃん!!」と思って購入し、何ヶ月か経ってメンテでガードを外したら・・・ あまりのショックに立ち直れないだろうな~と思っていましたガーン

 

ところが最近、コレにとんでもない値段がついているということを知りました。

まあ1967年の極限られた期間しか作られていないレア仕様だし、なによりも独自のトーンを持っており、これが後のシンライン(68年発表)開発の契機になったとか、様々な情報が出てくると、アコっぽい響きがするのかなぁとか、興味が湧いてくるものです。ちなみに普通のピックガードを取り付けると外からはわからないので、リイッシュー物は透明ピックガードを取り付けてあり、付属品として白いピックガードが付いてくるそうです。

 

最後にどれくらい生産されたのかという問題ですが、あるサイトでは「数本しか造られてない」などとか書かれていますが、調べると画像だけでも沢山ヒットするし、テレ本にも、一見いいかげんそうに見える穴の形も、見比べると正確に同じ形なのでテンプレートがあったのは明らかで、これによってかなりの個体にこの加工が施されたらしい、と書いてある本もあります。

 

果たして、その音色とはいったいどのようなものなのでしょうか?

私自身これまで無数の楽器を扱っているにもかかわらず、ヤフオクの質問欄からくる「どのような音色ですか?」という質問が苦手です。なぜならば、他人によって評価されたギターを自分が弾いてみた結果、全く異なる印象を受けることが多く、これはきっとその逆も大いにあり得るだろうと思うからです。

なので山野楽器の広告にあるリイッシューモデルの【試奏インプレッション】から紹介しておくと、ソリッドとシンラインの中間の音らしいです(構造がそうなんだから当たり前か?)。適度なエア感とミッドレンジに特徴があり、ジャンルを選ばないギターだと褒めちぎっています。ディーラーが商品を悪く宣伝するわけはないので結局自ら試奏に行くしかないでしょう。

 

次回は作業の内容を紹介します。

  【ロゴマークもあるよんラブラブ