②ネック周りの作業
それでは実際の作業に入りましょう。
まずはPHOTOGENICについているペグの左用を1つ調達する必要があります。しかしPHOTOGENIC製にレフティーモデルなんか存在しません
・・・どうすんの
通常の右用ペグを左用に変更します。え・・・そんなことできますの
安物中国製はありがたいことに、本物のクルーソンペグのようにシャフトとベースプレートを金具でかしめて固定する構造になっていないため、簡単にウォームギア(シャフト)とベースプレートを分離できるんです
そこでペグを一度分解してからウォームギア(シャフト)の方向を逆向きに入れ替え、再び組み立てるとレフティー用ペグの一丁あがりです
【右が再組み立てしたレフティー用】
ただし、この余分なペグ1個を調達するために、PHOTOGENICのジャスベースをHARD・OFFでもう1本購入しました(JUNK:2700円)。
実はPHOTOGENIC製でも年代によるパーツの仕様変更があり、前期型のペグと後期型のペグを比較すると、後期型はベースプレートの長さが短くなり、ネジがワッシャーと一体化した物になっています。おそらく部品点数を減らして作業の効率化を図ったのだと思いますが、それによって1個あたりの重量が85gから80gと軽くなっています。
【右側が旧型】
今回私はペグが5個になるということと、ボディー重量が軽い個体であったので、ヘッド落ちを防ぐ意味で5個とも後期型の軽いペグに統一しました(25gの軽量化)。
それではいよいよヘッドに穴を開けましょう。位置決めにはいくつか注意すべきポイントがあります。まず1つ目は、他の4個のペグと同じように、シャフトの外周がヘッドの縁から16mmの位置にくるようにします。
次に重要なのは、裏側のベースプレートがヘッドからはみ出さないような位置にする必要があるので、この2つの要件を満たすポイントを探りながら位置決めをしてください。
ストリングブッシュの直径はおよそ18mmなので、18mmのドリルビットを使いますが、いきなりこのビットで開けるようなことをしてはいけません。まずは3mmの下穴をヘッド裏側まで貫通させます。
そして表側だけではなく、裏側からも切削していって材のほぼ中央で貫通させるのです。
なぜそのような手間のかかることをするのかというと、10mmを越えるような大きさの穴を開ける場合、回転数の遅いハンドドリルだと切削速度が進行速度に負けて材を押す力が働き、穴の出口で材が割れてしまうことになるからです少々であればベースプレートに隠れてしまいますが・・・
こういったノウハウも、経験(失敗)から学んでいく必要があります。
【どんピシャ!と言っていいポジションに収まりました】
次にクリアすべき課題はネック幅の問題です。元々4弦として作られたネックに、もう1本の弦を付け足すわけですから、当然の結果として弦間ピッチは狭くなります。ナットは新たに作り直しますが、ブリッジが通常の5弦用だと弦間ピッチがブリッジに向けて放射状に広がり、ハイポジションでは弦がネックから落ちやすくなってしまいます。そこでブリッジには、最大幅が4弦用と同じサイズで作られているナローピッチの5弦用ブリッジを用意する必要があります。これだとピックアップも5弦用を用意しなくても4弦用の物をそのまま使うことが可能になります。ただし神経質な人の中には、弦とポールピースとの位置関係に違和感を持つ人もいると思うので、カバードタイプのピックアップに換装しました。
【牛骨を削り出します:溝切りは弦を張ってから】
【右が4弦用と同じデザイン・同じ幅で作られた5弦用ブリッジ】
次なる懸念は、4弦ネックが5弦のテンションに耐えられるのか?という問題です。元々反りのないコンディションの良いネックでしたが、逆反り方向にアイロン矯正をかけてロッドナットの効きを良くしました。
その状態でLo-Bの弦を張ってみましたが、弾かない時には弦を緩めることさえ忘れなければ問題はなさそうでした。Lo-Bはキーが低いので、思ったほどテンションは増大しないようです。むしろ問題は、Lo-Bの弦が太いため、ローポジションでは弦間が狭すぎるように感じることです。
そこで今度はHi-C仕様にしてみました。Hi-C用のセット弦は思いのほか入手が難しく、選択肢がほとんどありませんでした。ネットで「Hi-C」と検索しても、オレンジジュースほども知られていないことが判明
ともあれ、細い弦を張るのは正解で、通常の5弦ベースのネック幅に馴れている人でも少しの練習で容易に弾きこなせると思いますし、むしろ手の小さい5弦初心者にはお奨めだと感じました。Hi-C仕様はLo-B仕様ほど一般的ではないですが、和音を多用するソロプレイヤー、ギターも弾くマルチプレイヤーやギターとユニゾンで弾きまくりたいプレイヤーであれば1弦を半音下げてHi-Bチューニングにするのもいいでしょう。
ナットは牛骨で作りなおし、Lo-Bを想定して溝を切ってありますが、テンションバーを装備したので、そのままHi-Cを張っても大きな問題はないと思います
次回はボディー加工に入ります