作業⑥【フロントハム改造】
今回素材としてPHOTOGENIC製テレキャスターを選んだのには理由があります。フロントポジションが最初からハムサイズにザグられているのです。
現在平行作業中のLEGENDの画像がこちらです。
コード溝も含めてFENDERと同じデザインで切削されているので、ハムバッカー用のテンプレートを被せてPUキャビティーをハムサイズに拡張しています。高速回転するルーターやトリマーによる作業は凄まじい粉塵が発生するので、作業ガレージを持たないカスタム初心者には家族の了解を得るのが困難でしょう
大した量削るわけではありませんが、たったこれだけでも削りカスは大量に出るので作業後の掃除は大変です
さて、実のことろPHOTOGENICであってもそのままでは取り付けできません。ハムバッキングPUには、マウント用のステーがあって、これが結構深いザグリを必要とするのです。ハムバッカーを搭載しているギターをバラしたことのある方であれば見たことあるはずですが、ハムザグリの両サイドは一段と深く掘られています。
今更ですが、BUSKERSのテレキャスターを分解してみたら、なんとBUSKERS
はそのようにザグられていました
申し訳ない・・・これから自分でやってみようという方は、PHOTOGENICではなくてBUSKERSを選ぶのが良いでしょう
ともかく私の作業はスタートしているのでPHOTOGENICの料理を続けます
ルーターやトリマーを使用しないでここを深く掘り下げるには、10mm程度のドリルで2つ穴を開け、間にできた出っ張りを彫刻刀で削り落として楕円形の穴にします。
【切削作業後は防湿のため塗装しておきましょう】
もう一つの楽な方法は、搭載するハムバッカーを、レスポール用ではなく、FENDER系のギターに搭載されることを前提でデザインされた物を選ぶことです。これらのハムバッカーは、マウント用のステーがずっと短くなっているので、ネジの先が入る分だけで済むため、ネジの位置に(余裕をみて)8mmくらいのドリルで1つ穴をあけるだけです。ちなみに同時並行で作業しているもう1本のPHOTOGENICはそのようにしています。
【右はおよそ半程度の長さしかありません】
話がピックアップに及んだついでに、テレキャスターのフロントにはどうようなピックアップを選ぶべきか考えてみましょう。いうまでもなくテレのリアポジションはシングルのままであることを前提とすると、結論はおのずとヴィンテージタイプのような出力の小さな物を選ぶことになります。小さいといってもハムバッカーである以上はリアよりは高出力です。
ただ、音質という面からいえば、テレのリアは耳につく、良く言えば存在感のある音質であるため、実用上それほどバランスの悪さを感じることはありません。少なくともピックアップの高さ調整で吸収できる範囲と考えてよいでしょう。今回私は、2本のPHOTOGENICに直流抵抗値8.1~8.2kΩ程度のハムバッカーを選びました。
【白いタップ線が出ていましたが、タップスイッチは設けませんでした】
しかし、もう1本のLEGENDには、直流抵抗値が通常の倍ほどの高出力ハムバッカーを搭載しました。その理由はフロントにコイルタップスイッチを装備するためです。
【こちらは色焼けで黄変したブロンドをシミュレートしました】
ノーマルハムバッカーをタップするとショボい音しか出ないため、そこそこ使えるシングルコイルのトーンを得るためには、タップしても直流抵抗値7~8kΩは確保したいところです。その場合のセッティングは難しくなりますが、シングル音を優先するならピックアップを弦に近づけ、ハムバッカーを優先するなら弦から遠ざけることになります。
話をメインのPHOTOGENICに戻します。こちらのピックアップには本物の国産ヴィンテージMAXON製のハムバッカー、それも美品のGOLDメッキを搭載しました。おそらくは70年代のGRECOか何かに付いていた物だと思います。
パーツは無数にあるので、いつどこで入手したかは記憶にありません。平たいポールピースもMAXON製ピックアップの特徴で、分かる人にはあまりにも明白でしょう。網線なんかもいい雰囲気です。
【何がCOSTOM MADEなのかは知りません: 8.12は実測値】
今回ピックガードをべっ甲タイプにしようと思ったのですが、穴のないエスクワイア用しか在庫パーツがありませんでした。どのみち普通のタイプがあったところで穴を広げることに変わりはないので、これにハムバッカー用の穴を開けます。
ここは思いっきりアナログで、私の場合は全て手作業です。分かり易いように白い裏側にラインを入れ、それを見ながらあまりギリギリにならないよう大雑把にノコを引きます。
【・・・と言いながら、今見るとかなりギリギリです(笑)】
後はヤスリでピックアップが通るまで少しずつ広げ、最後はサンドペーパーできれいに仕上げます。大きめに開けてエスカッションで隠すような雑な仕事はしません。
【むしろ下部は通り抜けないほど、既製品よりタイトになっています】
さらに今回、オクターブは甘くなりますが、PHOTOGENICの6ウェイブリッジから、オールドスタイルの3ウェイブリッジにグレードダウンしました(笑) バックローディングではないので、こういう変更も比較的簡単に可能です。あくまで見た目重視です。もう1本のPHOTOGENICはオリジナルブリッジのままとしました。LEGENDは最初から3ウェイブリッジです。
ブリッジを取り付ける際、一番気をつけるべきことは「位置決め」です。前後位置はイントネーションに関係し、左右位置はセンター合わせに関係します。私の方法は、1弦と6弦に弦の代わりにナイロンの糸を張り、ポールピースの位置とネックサイドの余白を見ながら位置決めをします。
この2つが調整つかない場合、ネックそのものの取り付け角度がおかしいか、ピックアップ(またはピックガード)のズレが考えられます。ただし、ここに至る作業を丁寧にやっていれば、ここで躓くことはまずありません。中国製ギターに限らず、マニアの多い古い国産大手の製品であってもセンターずれはよく見かけます。このあたりの作業は調整に時間がかかるので、1本1本に時間をかけられない大量生産品には仕方ないことかもしれません。
他にも色々やりましたが、もう長くなったので、塗装作業については別のギター(orベース)のカスタムの際に記事にすることとし、次回はいよいよ全体像を明らかにします。