作業⑤【電装系のメンテナンス作業】
なかなか本題のフロントハム改造に至らなくて恐縮ですが、もう少しお付き合いください。長期間放置された中国製ギターを使える楽器にするためには、思いの他やることが多いんです
エレキに使われている電子パーツは、ピックアップさえ死んでいなければ、他はシンプルな構造の部品ばかりなので比較的簡単に復活可能です。多くの場合(高額な部品ではないので)リペアに出してもいわば「消耗品」として即交換されてしまい、工賃とあわせて結局高額な料金を請求されることがあります
自分でやればタダです。何事も手間と時間を惜しんではいけません。
※ただし、苦労して作業完了してみても、取り付けてみると結局は部品が寿命で無駄骨になることもあります。部品の状態を見て判断することができるようになるまで経験を積みましょう。
①ポットのクリーニング作業
ボリュームとトーンに使われているポット類は、長期間放置された状態だと十中八九「ガリ」と呼ばれるノイズが入るトラブルを起こします。軽度であれば繰り返し回転させることで汚れが除去され、一時的に機能を回復することもあります。市販の接点復活剤を使う人もいますが、これも一時しのぎにしかなりません。接触不良の原因は全て、接点の汚れや金属表面の酸化皮膜が原因ですから、中を開けてきれいに磨いてあげれば性能を回復します。
それではまず、ポットのケースを開いてみましょう。4本の爪を起こしてカバーを取り外せば中身があらわになります。初めて見る人も、シャフト回してみればすぐに原理を理解できるでしょう。ドーナツ形の抵抗体(黒い帯)の上を、フォークのような3本の爪を持った接点が移動することで抵抗値が変化する構造になっています。
特に端子が接続されている金属部分を見てください。本来は他の金属部分と同じ黄銅色をしていないといけないのですが、黒く変色してしまっています。ここが一番ガリを起こすポイントなのですが、まずはここを金属用コンパウンド(ピカール等)を少量つけた綿棒の先で磨いてください。
次にフォークのような接点を磨くのですが、私はペーパータオルを5cm角くらいに切ったものを2つ折りにし、これにもコンパウンドを付けて抵抗体と接点の間にはさみ、シャフトを7~8回往復させます。ペーパーが黒くなればOKです。
今度は同じようにペーパータオルで黒い抵抗体の上もきれいにクリーニングしますが、狭い空間なので爪楊枝を差し込んで行います。
最後は新しい綿棒でコンパウンドを拭き取り、水分から保護するためにミシンオイルを1滴たらしてクルクル回転させ、ケースを閉じます。
実はオイルを注すには賛否があり、オイルが新たな埃の付着を誘発するという意見もあります。私の場合は金属表面の酸化皮膜の形成を遅らせる方に価値を置いて注油することにしています。この方法は、ケースの爪は何度も開け閉めを繰り返すと金属疲労で折れるので、どの道何度も使える手ではありません。いずれはPOTそのものを交換しましょう。ヴィンテージのオリジナルにこだわる人は、外ケースだけ交換するという人もいると思います。
②スイッチのクリーニング作業
これも電子部品である限りにおいて、ポットと同じく接点が問題の原因です。フェンダーオリジナルはCRL社やOAK社といったオープンタイプのセレクターですが、近年の中国製は例外なく緑色のケースで覆われたBOXタイプが使われています。中身の構造に若干のバリエーションはありますが、どれもほぼ同じ物です。
これらは国産のYMシリーズと同じで、外からの埃に強い反面、メンテナンス時にはカバーを開ける必要があります。YMシリーズは小さなネジ2つで開けられますが、この緑のセレクターは、カバーを外すのに4つの爪をペンチで摘まんで曲げる必要があり、少々厄介です。
どのタイプのスイッチをクリーニングする際にも気をつけるべきことは、力を入れ過ぎて端子が曲がるようなことがないようにしてください。接触を強くしようと思って故意に曲げると、結構微妙に調整されていて、再起不能にしてしまうことが多々あります(私)
似たような物ですが、一応国産のBOXタイプのスイッチも画像を載せておきます。
【国産のYM-30】
【YMの古いタイプ:ここまで汚いと、もう交換した方が賢明でしょう】
③ジャックのクリーニング
最後は音の出口、ジャックのクリーニングです。機材マニアの議論を聞いていると、信号の劣化を防ぐために高価な金メッキシールドを使うとか、バッファー回路はいるとかいらないとか、スイッチはトゥルーバイパスにすべきとか電子スイッチでいいとか・・・
お金のある人はいくらでもかければいいと思いますが、まずは足元である自分のギターのジャック内壁を見てみましょう。
長期間放置されたギターのジャックは、大抵の場合内壁が艶を失い導通が悪くなっています。空気に触れていれば、ブリッジやペグといった金属部品の表面がくすんでしまうのと同じことがジャックにも起こっているに過ぎません。
毎日のように弾いているギターであれば、ジャックと擦れて金属面が常に磨かれた状態になっているはずです。もしここにサビが出てしまっているようなら交換してしまいましょう。艶を失っている程度であれば、これまでと同じようにコンパウンドをつけた綿棒で磨いてください。
ギターのメンテナンス本などには、サンドペーパーを丸めて突っ込むなどどいう荒技を紹介しているのを見かけますが、これはあくまで緊急時の応急処置と考え、この際面倒くさがらず、ジャックをギターから取り外し、グラウンド(アース)が接触する内壁だけではなく、ホットが接触する端子部分もピカピカに磨きましょう。サンドペーパーだと簡単に地金が露出してしまうのでその瞬間はOKでしょうが、パーツとしてはジ・ENDです
次回は、ようやく表題の「フロントハム改造」に入ります