作業④【様々な修正作業】
中国製の安物は、あらゆる点で確かにチープです。しかし、安い木材が、高級な木材よりもサウンド的に劣るというのはそれほど自明の事でしょうか?
私は木材の値段はあまりあてにならないように感じています。それよりも、シーズニングがきちんとなされているか、また、(そこそこ比重のある木材であれば)高い精度できちんと組んであるかどうかの方がより重要だと思います
その点、中国製ギターは確かに組込み精度は酷いです。中でも特に酷いのはハンドドリル作業! ふつう「手作業で」と言えば、機械ではうまく加工できない部分を、より高い精度で行う場合を指しますが、それは職人業の世界での話。チャイナ工場労働者の「手作業で」は「大雑把で雑に」と同義としか言いようがありません。
以下に実例をご覧にいれましょう。
①ネックジョイント部分
ネックとボディーを接合する重要な部分ですが、分かり易いように4mmのラミン棒を差し込んでみました。一目瞭然で4本とも斜めに入っています。また、横方向だけではなく、縦方向にも斜めに入っているので、正面から見ると左右の出口の高さも数ミリ単位でずれています(左側が高い)。
これを作っているのは楽器造り職人ではなく、単なる工場労働者です。
もちろん全てがこうだという訳ではなく、人によってスキルの差はあるので、同じPHOTOGENICやSELDERでも修正の必要を感じないくらいちゃんとした物もあります。もう少し几帳面な性格の作業員もいるのでしょう。
とりあえずこのギターはφ5mmのドリルでネジ山をさらった後、ラミン棒で埋めてしまいました。当然ネック側も穴埋めをします。この時、ラミン棒はアルダーやメイプルのような強度がないので、低粘度の瞬間接着剤を浸透させてガチガチに固め、強度を出すことを忘れないでください。
そして、あたらめてジョイントプレートを載せて穴の位置を決め、ボール盤を使って正確に垂直な穴を開けます。こういった穴開け作業は、大手メーカーでも機械加工で行っているはずです。
ピンボケですみません
②ブリッジの取り付け部分
爪楊枝を立ててみると、こちらもきれいに同じ角度で斜めに入っています。ここはφ4mmのドリルでネジ山をさらって穴埋めをし、ボール盤で垂直な穴を開け直しました。
③ストラップピンの取り付け部分
今回一番酷かったのはココ!いったいどういう神経をしているのか目を疑います これも当然埋めますが、ボール盤は使えないので私もハンドドリルで穴あけをしますが、それでもハンドドリルに付いている水平儀を見ながら、真っ直ぐに刃を入れることくらいはできます。
【修正後】
④ペグの取り付け部分
すみません外す前に写真を撮るのを忘れました
中国製ギターは、6連に並んだペグも不揃いの場合が多いです。そもそも取り付ける時にチューナーのツマミ部分の向きをきれいに揃えれば、その間隔が均等かどうか見極めることができますが、中国人労働者にそんな暇はありません。彼らはおそらく午前中だけで100本とかコナさなければならないのです。私はこの部分の修正だけに30分をかけることができます。
⑤その他の部分
ピックガードやコントロールプレートのネジ穴も全て埋める必要があります。これは斜めに入っているからではなく、ピックガードを他の物に交換してしまうためです。ピックガードを交換するとネジ穴の位置はまず一致しません。そしてコントロールプレートの位置も微妙に影響を受けます。
結局のところ中国製ギターの場合、まずもって穴という穴は全て塞ぐ必要があるというのが結論です。まだまだ次回も修正は続きます。