作業②【塗装剥がし】の続き
リフィニッシュの続きをもう少し続けます。
先回は塗装剥がし作業の中でも、楽にできている画像を掲載しました。今回は、やっかいなシーラー層の画像をご紹介します。
ギター材の中でも、マホガニーやアッシュといった導管の目立つ多孔材の場合はウッドフィラー(目止め剤)が塗布されていますが、アルダーやバスウッドの場合にも下塗りとしてサンディングシーラーが吹かれており、これが結構分厚い場合が多いです。昔のTOKAIなどは、「ポリ塗装なのに塗膜が薄い」などと言われていましたが、表面のカラーコートは確かに薄かったですが、これはサンドペーパーで少し擦っただけで木目が現れるので勘違いされていただけで、その下には透明の分厚いシーラー層があり、これを完全に落とすのは相当に骨の折れる作業です。
下の画像は90年代のFERNANDES製テレキャスターの剥離作業の様子ですが、完全に木地まで落とす過程で、シーラー層がどのように見えるかという画像です。
色が濃く見えている場所がシーラー層が残っている部分で、白っぽいところが木地です。浸み込んでいるので、ペリペリと剥がせるような物ではなく、削り取っていくという作業です。
次の画像はボディーのボトム(底辺)部分とカッタウェイ部分で、この方向は、導管を切断する方向にカットされている面であるためにシーラーが余計に浸み込んでおり、黒っぽくなっている部分は少々削った程度では落ちません。ただし、ここまで落としておけば、生地着色の段階で95%は目立たなくなってしまいます。
私が、なにゆえここまで苦労して木地まで戻すのかというと、「オールラッカーリフィニッシュ」を謳う以上、中途半端な仕事は許されないということに加え、基本的にナチュラルフィニッシュにすることが多いので、より木目を浮かび上がらせる生地着色をするためには、シーラー層が邪魔になって美しく仕上がらないためです。またナチュラル仕上げではなく、人気のレリック仕様にする場合にも、シーラー層が残っていると、塗装が剥げて木地が露出した部分に施す、手垢で黒ずんだような「汚し加工」の効果が得られません。
逆に言うと、この「汚し加工」が効いておらず、まだらになっている部分があれば、中途半端なオーバーラッカー物であることを見抜くことができます
もう1本のフォトジェニを見てみましょう。私は常時3~4本のカスタムを、やや工程をずらして時間差で並行作業しています。特に今のような梅雨の時期は、たとえ雨が降っていなくても湿度が高いと塗装作業はできません。週末を有効活用できるように可能なところから進めていきます
これはバインディングなしの普通のテレキャスターです。前オーナーは本気で使っていたようで、ポット、スイッチ、ジャック、コンデンサーがグレードアップされていました。配線もプロの仕事っぽかったです。ナットが割れていたので安く買えました
塗装を剥がすと、均等割りに近い3ピースで、おまけにネックには細かいバーズアイが出ていました。これはナチュラル可能と判断し、木目が際立つように生地着色しました。
次回は少々やっかな、作業④【様々な修正作業】に入ります。