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渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「顔はアジア人、メイドインジャパンと
言ったら過剰反応したから日本人では無い。
仲間が逃げたと言ったら
 また反応した。おそらく同国民だろう。
もし森田の言う事が本当だったら、
 テロはアメリカで起こる。つまり日本が嫌いで
 アメリカを敵国視しているのは・・・」
「キム・ユンヒと同じ?」
「可能性が高い!」

「亮、持っていかれたトランクはどうするの?」
戻ってきた小妹が亮に聞いた。
「水遁の術の達人が今奪還している」
亮は暗闇の海を見つめた。

~~~~~
沖に向かって走っているゴムボートの男は
残してきた仲間を気にもせず沖に向かって行った。
するとボートが大きく旋回した。
「なんだ!」
男は慌ててレバーの舵を戻そうとしても動かず
ボートのエンジンを止めそれを見ていた。
その時ボートが大きく揺れると目の前に
ずぶ濡れの仁木が立っていた。
「さあ、そのトランクもらおうか・・・」
男はボートを止めいきなりピストルを発砲すると
仁木はそれを避け海に飛び込んだ。

「何処へ行った?」
男はピストルを持ってゴムボートの回りを見て
回った。
「おい、出てこい!」
男はゴムボートの上で激しジャンプしボートの回りを蹴った。
仁木が海に入って2分以上経つと
ボートの下に潜っているとは考えられないと
考えた男はボートのエンジンをかけ舵の動きを確かめた。
先ほど動かなくなった舵は驚くほど軽くなり
男はここぞとばかり沖に向かって
船を走らせた。

人間は自分の能力を基準に考える動物である。
常人が水に潜って1分前後、スイマーで3分程度
海女さんで4分程度。
男は仁木が2分も海に潜っているなど考えも及ばず
自分が撃った弾が突然ボートに上って来た仁木に
当たったと思いこんで油断していた。

その時、突然男の首に腕が絡まった。
「ウッ」
恐怖におののいた男はボートの舵とアクセルを放した。
「お、お前何者だ!何分も海の中に・・・」
苦しそうな声で男が仁木に聞いた。
「あまちゃん」
「あ、あまちゃん???」
「なんだ、知らんのか?」
仁木は海の中に突き落としボートを奪って岸へ向かった。
~~~~~
「三雲さん、どうですか?」
亮は砂浜で横になっている三雲の腹の具合を聞いた。
「さすが大口径銃のショックは効きます、参りました」
「でしょうね、生きていて良かった」
亮は500円硬貨大に潰れた弾丸を三雲に見せた。
「命が有ったのはこのウエアのお蔭です、
 亮さんありがとうございます。
 ところで仁木さんは?」
「いま、アルミケースを奪いに行っています。
 もうすぐ戻ると思います」
「えっ、大丈夫なんですか?」
三雲は仁木を信じ切っている亮が不思議だった。

「はい、信じていますから。みなさんを」
すると仁木が乗ったゴムボートが岸に着き
仁木が嬉しそうに奪い取ったアルミケースを
掲げて見せた。
「仁木さん、お疲れ様でした」
「ウッ」
男は手の甲の痛みでピストルを落とした。

亮が現れ安心した仁木は、アルミトランクを持っている
男を追って海の中を走った。
男は乗って来たゴムボートの脇に立つと
そこに小妹が股まで海水に浸かり男にピストルを向けた。

「Freeze!」
「あはは、お前たちは実弾を撃たないって聞いている」
男は笑いながらゴムボートにトランクを放り投げた
「パーン」
男の腕に弾丸が当たり血が飛び散った。

「ウッ」
男は慌ててゴムボートに乗り
仲間がまだ戦っているにも関わらず
ボートを走らせた。
「しまった!逃げられた」
小妹はピストルをゴムボートに向けて何発も撃ったが
強化ゴムはそれをことごとく弾いていて
暗い海に消えて行った。

「亮、逃げられた」
「了解!」
亮の小妹に対する返事はそれを気にする様子はなかった。

~~~~~
亮と戦って居る男はかなりの手練れだったが
亮の武器がテニスラケットで戸惑っていた。
27インチ=68.58cm、重さ300グラム前後の
ラケットはスピードが速くガットの張っている
面とフレームが男を惑わした。
「く、くっそ」
男は腰の後ろの隠していたピストルで
亮に向かって発砲した。

「バッシ」
亮は弾丸をラケットで地面に
跳ね返した。
「なに!」
「弾丸も跳ね返すラケット売れそう」
亮は予想以上の現象に驚いて笑った。
「なぜ、ラケットで弾丸が跳ね返せる!」
男は連続で亮を撃つとことごとくそれをラケットで
男の足元に跳ね返した。

「まさか!」
男は亮の頭、ボディ、足を狙っても亮はそこに確実に
ラケットを正面に持ってきた。
そして8発を撃ちえ終えると亮はヘッドを持ち
グリップを男の喉元を突いた。

男は苦しくて咳をしながら仰向けに倒れた。
「なぜだ!」
「なぜだって?このラケットはメイドインジャパンだからだ」
亮は冗談を言ったが、実は男がピストルを撃つ瞬間の
目の方向、筋肉の動きを観察して動いていた。

「そんな馬鹿な!」
「さあ、言え。お前は誰も命令で動いている?」
「フン。茂蔵に聞け!」
男はリーダーは茂蔵と言わんばかりだった。
「ああ、茂蔵は海でおぼれている、もう1人の仲間はボートで逃げた。
 聴くのはお前しかいない」
「残念だな、俺は話さない」
男はブーツに隠してあったナイフで自分の首動脈を突き刺した。

そこからはシャワーのように血が噴き出て
砂浜に散らした。
「馬鹿!なんて事を」
亮は駆け寄り首にタオルを当てて止血を試みたが
首の動脈を完全に切ってしまって助ける事は不可能だった。
そして、自害してまで守る忠誠心を持っている
男と組織に恐怖心を持った。

「どう?」
三雲の手当てを終えたマギーが男の生死を尋ねると
亮は首を振った。
「自害の方法を知っているみたいだ」
「亮、この男何者?」
茂蔵の腕に十字手裏剣が突き刺さった。
「クッソ!」
茂蔵は腕に刺さった手裏剣を抜きながら
振り返った。
「美喜、お前か!」
茂蔵は仲間のいた方を見ると
マギーが2人の手に拘束ベルトを付けていた。
「一体あんたはいったい何をするつもりだ!」
「いくらお前と俺の仲でもそれは言えねえ」
「ん、どういう意味?」
美喜は茂蔵の言っている仲の意味が分からなかった。
「とにかく俺の邪魔はするな。そうすれば命だけは助けてやる」

「バリバリバリ」
美喜と三雲に向かってマシンガンの弾丸が撃ち込まれ
2人は砂浜に伏せた。
仁木の予想に反し海からマシンガンを持った男を
2人乗せたゴムボートが高速で近づいて来た。
「おお、お迎えが来た」
茂蔵はそう言って海に向かって真っすぐ走り出した。

「くそ!」
美喜は砂を握りながら悔しんだ。

茂蔵はアルミのトランクを持って海に入り歩き出し
膝のところまで歩くと自分の足が掴まれた
ように動かなくなっていた。
「な、何!」
「ザザッ!」
海の中から突然現れた仁木は茂蔵の後ろから首に腕を巻きロックし
再び海に潜った。
仁木に首と足を後ろからホールドされた茂蔵は
身動きも呼吸もできなかった。

~~~~~

「仁木さんの水遁の術だ」
茂蔵が突然水に引き込まれると声を上げた。
「三雲さん、あのアルミのトランクを・・・」
茂蔵が手を離したトランクを指さした。
「了解」
三雲がアルミトランクに向かって走り出すと
突然三雲の体がくの字に曲がって後方に飛ばされた。

「キャー」
マギーは明らかに大口径の弾丸が三雲のボディに当たった事を
確信し三雲のところに駆け寄りお腹を撫でた。
「出血が無い!でもこれじゃあ、呼吸が・・・」
マギーが人工呼吸をしようと口を近づけようとすると
その頭を50mm弾が銃口を向けていた。
「人命救助は敵のいない所でしろ!」
~~~~~
海中の中では身動きできない茂蔵は
呼吸が出来ず口から息を吐いた。
そして吸うべき空気の代わりに
海水を肺に中に入れるともがき苦しみ
大きく目を見開くと力尽きた。
「トランク!」
仁木は立ち上がりアルミトランクの行方を追うと
マギーに銃口を向けている男を見つけた。
「マギー危ない!」
仁木が大声を出した。

男はその声を気にも留めずマギー向かって引き金を引いた。
「ドーン」
大口径銃は低い音を立てて弾丸を発射した。
その弾丸はオレンジの光を放って空高く飛んで行った。

「何!ラケット」
男は自分の手の方向を変えた物を見た。
「マギー逃げろ!」
「亮!」
マギーと美喜は気を失っている三雲の体を引きずって行った。
亮はそう叫ぶと黒いラケットのフレームで男の首筋を叩き
それを返しピストルを持っている男の右手首の甲を叩いた。