グッド・ジョブ媚薬8 黙示禄111 | 渡夢太郎家の猫

渡夢太郎家の猫

2008年 3月に蘭丸の2度目の子供ができました
これで、我が家は9匹の猫です

「ただいまからF電機株主総会をはじめます」
議長であるF電機社長の社長、風戸が宣言した。
日本の株式総会の主な議題は決算の承認と
取締役の承認である。
決算に問題がある場合、株主のほとんどの質問は
配られた資料に基づいた形式的なもので、
特別な質問がない限り株式総会のほとんどは時間通りに終わる。

総会屋は問題の有る企業と契約をして
その株式総会をスムーズに行う為の
行動をする。

F電機の株式総会は資料を基に形式的に
決算の説明しスクリーンにスライドを写し
赤字の埋め合わせに工場跡地の売却益を充当し
再建計画を説明した。

そして形式的な株主質問が行われ
質疑、応答がされ
財務担当者が内容を説明した。

株主は経営内容がしっかりし配当が保障されば
さほど騒ぎ立てることはなかった。

そこに亮が手を挙げ立ち上がった。
「質問があります」
進行役の女は亮の存在を無視し
違う人間を指名していった。
「ふう」
亮は大きく息を吸って声を張り上げた。
「質問がある。指名しろ!」
亮の声が会場に響き渡った。

進行役の女は驚きステージの袖に目をやって
上司の顔を見てうなずいた。
「次の方は・・・」
女性が指差したのは亮から遥か遠くの女性だった。
「こういう手があったのか・・・」
「まて!私はこの会社の29%の株主の委任状を持っている」
亮が声を上げると会場がざわめきだした。
「議事進行、議事進行!」
塩見の部下たちが大声をあげてざわめきを止めようとした。

「おい、彼に質問させろ!さっきから手を挙げているじゃないか」

「そうだ。大株主だぞ!」

「何か後ろめたい事があるんじゃないか!」

あちこちから怒号が飛び交い
赤字の原因がただ単に売り上げの低下
という事に疑問を持っていた株主が
騒ぎだし会場は騒然としていた。

「静粛に!静粛に!」
総務課の人間がマイクを持って声を張り上げた。

壇上にいた取締役たちが風戸の元に駆け寄った。
「社長、あの男に質問させなくては収まりませんよ」
「しかし、もし年金の事だったらどうする。
 この後の取締役の承認ができなくなる」
風戸が顔色を変えて答えた。
「しかし、このままでは・・・」

風戸は会場の混乱を見渡している塩見をにらみつけた。
「おい、宮部。あの男を連れ出せ」
「はい」

「亮、何をやっている!」
「ああ、じっちゃん」
亮の祖父拓馬が亮を叱咤した。
「ここはマイクなどなくてもお前が声を上げる時だ。
 騒ぎが起こっているという事はお前の味方
 がいるという事だぞ」